2022年の世界の直接投資、勢い弱まるも、インドでは新規投資が増加

(世界、日本、インド)

国際経済課

2023年01月25日

国連貿易開発会議(UNCTAD)が1月17日に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2022年の世界の対内直接投資(推計、注1)は再び下降局面にシフトした。ロシアによるウクライナ侵攻や食品・エネルギー価格上昇、金融不安、債務の圧迫など、世界規模のさまざまな危機の連鎖が背景にある。2020年後半以降の先進国を中心とする力強い投資の回復局面が2022年第1四半期(1~3月)以降、一転したかたちだ。

2022年の世界の直接投資を形態別にみると、国際プロジェクトファイナンス(IPF、注2)とクロスボーダーM&Aは金利上昇や金融市場の不確実性の高まりによる影響を受けやすい。IPFの投資額は30%超減少、件数は前年とほぼ横ばいの2,343件にとどまった。世界のクロスボーダーM&Aは、2021年に過去最多を記録した案件数が12%減の7,502件(金額は6%減の6,970億ドル)へと減少。業種別で最大の情報通信産業も14%減(1,749件)に縮小した。M&Aを牽引してきた北米向けは金額ベースで52%減(1,500億ドル)、EU向けは8%減(1,300億ドル)と、軒並み落ち込んだ(添付資料表2参照)。

一方、世界のグリーンフィールド投資件数(発表ベース)は、2022年前半まで続いた増勢を受け、年間で6%増(1万6,095件)となった(添付資料表1参照)。大型投資案件の増加によって1件当たりの平均投資額が引き上げられ、金額ベースでは54%増の1兆840億ドルへと増加。2022年に発表された投資上位10案件のうち、半導体の受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)による対米投資を含めて3件が半導体製造業の巨額投資案件だった。このほか、6件の大型プロジェクトは再生可能エネルギーが占め、そのうちの4件がエジプト向けだった。同国では2022年5月、2050年に向けた国家気候変動戦略が導入され、11月には国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)も開催されている。また、日本からの投資案件として、丸紅による英国向けの風力発電プロジェクトも含まれた。

地域別にみると、先進国・地域では、グリーンフィールド投資件数が4%減、クロスボーダーM&A実行額が5%減だった。米国向けは、直接投資の多くを占めるM&A実行額の大幅減が響いた。また、欧州主要国ではグリーンフィールド投資案件が軒並み減少し、欧州全体で15%減となった。

新興・途上国・地域向けのグリーンフィールド投資件数は、中東や南西アジア向けが牽引したことにより、26%増、クロスボーダーM&A実行額は6%減となった。国・地域別では、中国でグリーンフィールド投資件数が31%減となり、落ち込みが目立った。各国で投資が減速する中、インドでは例外的にグリーンフィールド投資件数が前年の2倍となり、投資の勢いが突出している。ASEANではクロスボーダーM&A実行額が74%減と急減した半面、グリーンフィールド投資件数は21%増と堅調だった。

2023年の世界の対内直接投資額の見通しについて、UNCTADは世界の多くの国・地域で景気後退の局面に入り、マイナス成長または低成長が見込まれることから、世界の対内直接投資は減少すると予測する。資金調達環境のさらなる悪化や、各種の世界的危機が投資家にもたらす不確実性の増大がとりわけ新興・途上国・地域では債務リスクの増大によって、大きな引き下げ圧力がかかると指摘した。

(注1)統計の大幅な見直しや一部データの欠如を理由に、2022年の世界の対内直接投資総額は今回の報告書に掲載されず、世界投資報告書(World Investment Report)2023で発表予定としている。

(注2)資金調達方法にかかわらず、少なくとも1件の海外投資家が出資するプロジェクトを指す。グリーンフィールド投資やクロスボーダーM&Aともそれぞれ重複する部分がある。

(森詩織)

(世界、日本、インド)

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