企業は2023年内の景気後退を懸念、米シカゴ連銀ベージュブック
(米国)
シカゴ発
2023年01月24日
米国連邦準備制度理事会(FRB)が1月18日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)(注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は2022年11月後半から12月にかけての同地域の経済活動について、全体的にわずかに低下した(decreased slightly)と報告した。前回報告と同様、多くの関係者が今後数カ月の成長鈍化を予想しており、2023年内の景気後退の可能性について懸念していると報告した。
同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は緩やかに(moderately)増加したが、関係者は今後12カ月間に増加ペースが鈍化するとみている。引き続き労働者を確保することが困難との報告があった一方で、雇用のニーズを満たすことができたとの報告もあった。
個人消費は報告期間中ほとんど変化がなかった(little changed)。年末商戦中の自動車以外の小売売上高は予想をわずかに上回って増加した。小売業者はクリスマス前に多くの販促をし、クリスマス後にも余剰在庫の売却のためにさらに販促の強化をしたとの報告があった。
企業支出はほぼ変化はなかったが(little changed)、企業の設備投資については、自動化を目的としたものが目立ったとの報告があった。製造業では、引き続き万が一に備えて在庫を保有する企業が多く、在庫はやや高水準となった。一方、サプライチェーンの混乱がなくなったと多くの企業が報告した。
製造業の需要は控えめに(modestly)減少した。関係者からは、投入資材が入手しやすくなったことが受注残の減少に役立ったとの報告があった。自動車生産はわずかに減少したが、大型トラックの需要はわずかに増加した。
2023年の同地区での農業所得について、関係者は、好調だった前年に比べて減少するものの、堅調に推移するとみている。また、河川の水位が上がり、貨物を運ぶ小型船による輸送コストがやや緩和された。肥料や化学薬品、エネルギーなどの投入資材の価格が低下し、投入資材入手への懸念は少なくなった。
地域社会の状況について、地域開発団体と行政機関は、経済活動にほとんど変化はなかった(little change)と報告した。非営利団体は、雇用の先行きに対する不安が持ち家の取得など、低・中所得世帯の長期的な財務上の決断を複雑にしていると報告した。
個々の調査対象項目ごとのポイントは添付資料表参照。
(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。
(星野香織)
(米国)
ビジネス短信 25abca23adb6e2ac