マンチン米上院議員、インフレ削減法改正法案を議会に提出

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月26日

米国民主党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は1月25日、インフレ削減法(IRA)に盛り込まれたクリーンビークル(注1)の購入に対する税額控除の一部要件に関し、適用開始時期を早める改正法案「米国車両安全法(AVSA)」を議会に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。改正法案は、現在保留となっているバッテリー調達価格要件(注2)の適用開始時期を、IRAが定める「ガイダンスの発表後」から「2023年1月1日」に前倒しするもの。マンチン氏は財務省に対し、同要件の速やかな適用開始を求めており、「インフレ削減法に含まれる明確な要件をすべて満たすことなく、7,500ドルの全控除額を引き続き利用できるようにすることは容認できない」と述べている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

IRAでは、バッテリー調達価格要件の適用開始時期を、財務省が細則を定めるガイダンスの発表後としている。ただし、同要件をめぐっては不明な点も多く、自動車メーカーや自動車を主要産業とする国・地域から、見直しを求める声が寄せられている。政府内での調整に時間を要していることから、財務省は2022年12月19日、ガイダンスの発表時期を、IRAの定める2022年末から2023年3月に後ろ倒しすると発表した(2022年12月20日記事参照)。その間、同要件を満たさない車両であっても、北米で最終組み立てが行われるなどの要件を満たせば、7,500ドルの控除の対象となる。オートモーティブ・ニュース(1月25日)によると、現在約40モデルが税額控除の対象となる可能性があるものの、改正法案が発効した場合、対象車両はほぼゼロとなる可能性もあり、事実上、税額控除を一時停止させることとなる。

マンチン氏は「IRAは何よりもまずエネルギー安全保障法案であり、電気自動車(EV)の税額控除は、国内の製造業を成長させ、EVバッテリーの生産に必要な重要鉱物の海外サプライチェーンへの依存を減らすように設計されている」「EV用に電力を供給するバッテリーを海外のサプライヤー、特に中国に大きく依存しているのは恥ずべきことだ」「エネルギーの安全保障とエネルギーの自立なくして、国家の安全保障はあり得ないということを繰り返し述べなければいけない。IRAとEV税額控除は、世界の超大国としての米国が、価値観を共有しない国に恩恵を受けないようにするという議会の意図に従って実施されなければならない」と述べた。一部報道によると、今回の法案はマンチン議員単独の起案で、他の上院議員に共有されていなかったとされており、成立の可能性は不透明な状況だ(米国政治専門紙「ポリティコ」電子版1月25日)。

(注1)バッテリー式EV(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、燃料電池車(FCV)。

(注2)(1)バッテリー材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で抽出あるいは処理されるか、北米でリサイクルされている、(2)バッテリー用部品の50%が北米で製造されている、ことが定められており、いずれも2023年以降段階的に引き上げられる。

(大原典子)

(米国)

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