世界の識者は米中デカップリングの緩やかな進展を予測、米シンクタンク調査

(米国、ロシア、中国)

ニューヨーク発

2023年01月11日

米国シンクタンクのアトランティック・カウンシルは1月9日、世界の識者167人に今後の国際情勢の変化に関する見方を聞いた調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。調査では、米国を中心とする30カ国の民間、学会、政府などの有識者に、2023年から向こう10年の地政学や気候変動、技術革新、世界経済の展望を尋ねた。

調査では、回答者の5割近く(46%)が、ロシアが今後10年で国内分裂するか、破綻国家になると回答した。欧州の識者の49%が国内分裂を予測し、米国の識者(36%)よりもロシアの将来に対して悲観的な見方を持っている。この結果について、アトランティック・カウンシルは、ウクライナへの侵攻がロシアの将来に重大な混乱をもたらす可能性があると総括している。

米国が危機感を募らせる、中国の台湾侵攻の可能性について尋ねた質問では、70.5%が「今後10年以内に中国が武力によって台湾奪還を試みる」との考えに同意した(「強く同意」が12.1%、「いくらか同意」が58.4%)。特に政府職員の間で懸念が強く、88%が同意した。

米中対立に関しては、デカップリングの劇的な進展を予測する声は少数派だった。回答者の40.5%が今後10年で米中の経済的相互依存度は「やや減少する」と答え、「かなり減少する」は17.6%にとどまった。「やや増加する」は20.3%、「かなり増加する」は2.7%で、「ほぼ同じ」は18.9%だった。ただ、米国の回答者に限ってみると、64%が相互依存の減少を予測し、全体よりやや悲観的だった(増加は24%)。

2023年の米中関係を巡っては、特に技術分野で米国による政策の強化を予測する声がある。米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン・シニアバイスプレジデントらは2022年12月20日の論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米国の対中輸出管理の拡大を予測している。バイデン政権が国家安全保障を理由に強化している半導体関連の輸出管理(2022年11月7日記事参照)を多国間化したり、半導体と同様の包括的な輸出管理の対象に人工知能(AI)やバイオ技術などを加えたりする可能性があるとしている。

(甲斐野裕之)

(米国、ロシア、中国)

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