米個人消費、2022年12月は年間最大の減少幅、実質所得は新型コロナ禍前の水準近くまで低下

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月31日

米国商務省経済分析局(BEA)が1月27日に発表した2022年12月の個人消費支出(PCE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは実質で前月比0.3%減と、前月(0.2%減)に続いて2カ月連続で減少し、2022年で最大の減少幅となった。先行して発表されている同月の小売売上高(季節調整値)も前月比1.1%減と1年ぶりの減少幅を記録している(2023年1月19日記事参照)。年末商戦期間の12月にもかかわらず、消費の軟調さを示す数値が続いて発表されており、消費者の購買力が細りつつある現状がうかがえる。

12月の実質PCEの内訳は、財への消費支出が前月比0.9%減(前月0.9%減)となり、特に自動車や家具などの耐久財への支出が1.6%減(前月2.1%減)と減少幅が大きかった。サービスへの消費支出は前月から横ばい(0.0%)で、ヘルスケア、住宅、光熱費(主に天然ガス)で増加したものの、食品サービス、宿泊サービス、保険など金融サービスへの支出の減少によって相殺された。

また、実質個人所得(可処分所得)も公表され、それによると2022年通年では15兆915億ドルとなり、前年(16兆1,157億ドル)から大きく減少したほか、2020年(15兆8,316億ドル)をも下回り、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年(14兆9,078億ドル)に近い水準となった。平均賃金は足元では前年同月比4%半ばで伸びているが、それを上回るペースで物価は上昇していることから(2023年1月10日記事1月12日記事参照)、実質所得は目減りする現状が続く。

こうした実質所得の低下は、比較的高所得の消費者にも影響し始めている。金融サービス関連会社のピンツとレンディング・クラブが米国の消費者約4,000人を対象に実施した調査によると(調査期間2022年12月8~23日)、消費者の64.4%が2022年12月時点で給料を毎月使い切る生活をしていると回答しており、前年同月の調査に比べてその比率は3ポイント程度上昇している。年間所得が10万ドルを超える消費者においても、50.8%がこうした給料ぎりぎりの生活をしていると回答し、同比率は前年同月と比べて9ポイント程度上昇しており、高所得層にも購買力の低下は影響し始めているとみられる。

実質所得の目減りが続く現状でも、個人消費がこれまで堅調さを保ってきたのは、新型コロナ禍で積み上がった余剰貯蓄にあるとされるが、その余剰貯蓄も取り崩しが進んでいる(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)。インフレ鈍化の兆候も見られ始める現状だが、米国のGDPの約7割を占める個人消費がどこまで持ちこたえられるかに引き続き注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 09a8b121dc7a10d1