2022年第3四半期の貧困率は43.1%、前年同期比0.7ポイント上昇

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年12月20日

アルゼンチン・カトリック大学の社会負債調査研究所(ODSA)が12月6日に公表した調査結果によると、2022年第3四半期(7~9月)のアルゼンチンの貧困率は43.1%、うち極貧率は8.1%となった。貧困率は前年同期比で0.7ポイント上昇し、極貧率は0.9ポイント低下した(添付資料図参照)(注)。金銭的側面だけでなく、健康、教育、住宅などの生活の質も考慮した「多面的な欠如」は、今回の調査対象者10人当たり4人に影響を及ぼしており、約1,700万人が貧困に陥っている。

アルゼンチン政府は物価凍結や各種補助金制度を採用しており、国内ではインフレ(2022年11月28日記事参照)を抱え、対外債務再編途上でありながらも、貧困率の大幅な上昇はなく、逆に極貧率がわずかに低下している。ODSAによると、補助金制度がなければ貧困率は50%、極貧率は20%に達するとしている。また、年間インフレ率が1桁台に落ち着けば、貧困率も10~15ポイント低下すると試算している。

ODSAは、アルゼンチンにおける貧困の構造的な原因は、長年にわたって雇用が成長していないことだと指摘している。「雇用の成長を実現するには、国外からの大規模投資のみならず、生産性を向上する人材育成、新規雇用創出を目的とした国内資本による中小規模投資が不可欠」とする。また、「これまでの経済成長は、国内消費の活性化に基づくもので、輸出と投資に重点を置いていない。国内消費の拡大を促す政策によって、これまで社会的な崩壊を回避できたかもしれないが、財政不均衡や内外債務の拡大の原因ともなっている。これによって、高インフレ、金融不安、投資の減少、非正規雇用と貧困の拡大、不平等による社会格差がさらに広がっている」としている。

写真 ブエノスアイレス市内で段ボールや空き缶などを集めて収入を得る女性(ジェトロ撮影)

ブエノスアイレス市内で段ボールや空き缶などを集めて収入を得る女性(ジェトロ撮影)

(注)ODSAの貧困調査は、毎年第3四半期(79月)に実施。国家統計・センサス局(INDEC)の世帯アンケート調査(EPH)データに加え、独自の調査項目も含めて分析しており、INDECの貧困率とは異なる。貧困層の定義はINDECのそれと同じく、基礎的食料と住宅、保健、教育、衣類、その他の日常的な基礎的支出(基礎的全体バスケット、CBT)を十分に賄う収入がない世帯・人口を指す。極貧層とは、基礎的な食料(基礎的食料バスケット、CBA)を賄う収入がない世帯・人口を指す。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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