米主要港、10月の輸入コンテナ量は前月比1.3%減と3カ月連続で減少、全米小売業協会

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月09日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます127日)によると、10月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比1.3%減の200TEU1TEU20フィートコンテナ換算)となり、3カ月連続の減少になった。NRFによると、主要コンテナ港の輸入量は今後さらに減少する見込みで、20232月の輸入コンテナ量は前年同月比20.9%減の167TEUと、20206月(161TEU)以来の低水準に落ち込むとしている。

2022年は港湾の混雑状況や、港湾と鉄道の労使交渉の先行きが不透明だったため、小売業者は前倒しで商品を輸入している。コンテナ取扱量は、20225月に過去最高の240TEUを記録して以来緩やかに推移しており、今後6カ月間はさらに減少すると見込まれている。ハケット・アソシエイツの創設者ベン・ハケット氏は、コンテナ取扱量の減少理由について「小売業者は先に積み上げた在庫に加え、今後の消費者需要の鈍化や2023年の見通しを見越してバランスをとった結果だ」と指摘している。

また、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は、発表の中で「港湾はこれまでで最も忙しく、最も困難だった1年を乗り越え、冬の小康状態に向かっている。小売業者らは、ホリデーシーズンの残り数週間を容易に処理できるはずだ」と述べた。一方で、「嵐の前の静けさとならないように、西海岸の港湾における労使交渉を妥結させるとともに、そのほかのサプライチェーン問題に対処する時が来た」とも指摘した。

港湾と鉄道の労使交渉の行方がまだ決着に至らない中(注2)、西海岸から東海岸への輸送シフトは継続している。東海岸で最大のコンテナ貨物取扱量を誇るニューヨーク・ニュージャージー港では、貨物の取扱量が新型コロナ禍以前に比べ20%近く増加している。同港のコンテナ取扱量がロサンゼルス港やロングビーチ港などカリフォルニア州の主要港を上回ったのは10月で3カ月連続となった(CNBC1117日)。

東海岸への輸送シフトは、西海岸の港湾にとって継続的な損失になり得るとの見方もある。金融サービス会社のコーエンが、新型コロナ禍後のサプライチェーン環境の変化について実施した調査によると、荷主の大半は今後、貨物を西海岸に戻すとみられるものの、東海岸へ恒久的にシフトする割合も約10%あるとみられている。同社は、東部の輸送会社には長期的なビジネスチャンスが生まれると見込んでおり、物流業界の動向が注目される。

(注1)主要輸入港には、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港が含まれている。

(注2)鉄道労使交渉については、2022年12月5日記事参照

(樫葉さくら)

(米国)

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