タイ閣議でASEAN経済相会合などの結果報告、ロシアと貿易拡大で合意

(ASEAN、タイ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、香港)

バンコク発

2022年12月13日

タイの閣議で12月6日、カンボジアのシェムリアップで9月14~18日に開催された第54回ASEAN経済相会合(AEM)と2国間会合の成果の詳細が確認された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。一連の会合にはタイ商務省からサンサーン・サマラパ政務官が出席した。

タイとロシアの経済相会合では、両国間の貿易を100億ドルに拡大すべく促進することで合意した。農産物や食品、エネルギー、肥料、ゴムなどの品目に重点を置く。タイ商務省の統計によると、2022年1~10月の対ロシア貿易総額は前年同期比29.7%減の16億976万ドルだ。

タイとユーラシア経済委員会(EEC、注1)の会合では、EEC側から2023年1月までに自由貿易協定(FTA)締結に向けた第3回タイ・EEC作業部会をモスクワで開催するという提案があった。

タイとオーストラリアの会合では、ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)の改正に当たって、オーストラリアは完全累積制度(注2)の導入にタイ側の支持を求めた。また、同協定での国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)について、AANZFTAのメカニズム以外の紛争解決ルール導入に向けたタイ側の支持を要請したほか、オーストラリアが2021年に改正した外国投資規制での投資審査(スクリーニング・プロセス)を巡る取り扱いについても議論が行われた。オーストラリアの現政権は、既存協定にあるISDS条項を弱める意向と報道されている(「フィナンシャル・レビュー」紙11月14日)。

ニュージーランドとの会合でも、AANZFTAのISDS条項について、締約国が自発的に義務を選択できるよう改正する案について、ニュージーランドはタイに支持を求めた。また、タイがタマネギの輸入制限を緩和し、2022年3月からニュージーランドからの同品目輸出が可能となったことに謝意が示された。タイはニュージーランドに対し、タイの2028年万博招致に向けた支援を要請した。

タイと香港との会合では、デジタルコンテンツや映画などのビジネス協力の方向性について議論した。また、香港の地域的な包括的経済連携(RCEP)加盟に向けて、香港側はタイに支援を要請した〔香港は既にASEAN事務局に対して意向書(LOI)を提出済み〕。

AEMの成果はおおむね、9月に発表されていた共同声明(2022年9月22日記事参照)の通りだったが、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)の共同研究が2023年半ばに完了し、交渉開始は2023年下期から2024年上期の見通しであることが報告された。また、RCEP協定の事務局について、初期段階ではASEAN事務局内の特別ユニットとして設置される予定と報告された。RCEP事務局については、カンボジアやインドネシアが自国内での設置に意欲をみせている。

(注1)ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスが加盟するユーラシア経済連合(EAEU)の執行組織。

(注2)原産地性の判断で付加価値と加工工程の足し上げを行う制度。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、香港)

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