2022年の国内投資の伸びは今一つ

(サウジアラビア)

リヤド発

2022年12月26日

サウジアラビア投資省(MISA)が四半期ごとに発表している「投資ハイライト(Investment Highlights)」を基に、2022年の対内直接投資の動向を振り返ると以下のとおり。

MISAが2022年第1四半期から第3四半期までに、外資系企業に対して新規に提供したライセンス件数は合計1万5,001件で、前年同期間の2,391件から約6.3倍と大幅に増加した(添付資料図参照)。特に第1四半期は9,383件と、前年同期の479件から20倍近くの増加を記録した(2022年6月7日記事参照)。増加した最大の要因は、2020年8月に成立した反隠匿法(Anti-Concealment law)に基づく新規ライセンス取得だ。従来、現地法人を持たずに地場企業に所属したまま海外の親会社の業務を担っていたケースでは、新法の下で新規法人設立が義務付けられた。

もっとも、同案件を除いた投資件数でも2022年第1四半期から第3四半期の合計は3,082件で、前年同期間の1,857件から6割以上増加した。投資省はその理由として、2022年第1四半期「投資ハイライト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、投資環境の改善、新型コロナウイルス感染拡大からの世界経済回復に伴う投資家心理への訴求、地域統括会社(RHQ)の設立などを挙げている。投資省によると、地域統括会社の設立に係るライセンス供与は、12月15日時点でのジェトロの問い合わせ結果によると、同日時点で77件まで増えている。

投資件数を分野別にみると、反隠匿法の影響を受けやすい卸売・小売業のほか、建設分野の投資が多かった。一方、大規模案件をみると、フォックスコン(台湾)やアマゾン(米国)、サウジ電気通信会社(STC)とアリババ(中国)の共同プロジェクトなど、ハイテク分野やデジタル分野の案件が目立った。

注目される国家投資戦略の目標達成

サウジアラビアの対内直接投資動向をみると、新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞から、いち早く回復軌道に乗ったといえる。しかし、2022年第3四半期のライセンス件数は前期比でわずかながら減少している(2022年11月1日記事参照)。対内投資金額でも、上半期の実績は約41億ドルにとどまっており、2021年の実績193億ドルと比べても伸び悩みが見受けられる。

2021年10月に政府が発表した国家投資戦略では、2030年にかけて年率平均13%の国内投資増加が計画されるとともに、対内直接投資が果たす役割が年々増加する設計となっている。例えば、2022年の目標は前年目標から約5割増しの610億リヤル(約2兆1,350億円、1リヤル=約35円)と設定されている。2022年を通して目標額に達するかは楽観視できない状況といえる。

(秋山士郎)

(サウジアラビア)

ビジネス短信 d8fe71cd2c8e49af