2023年の最低賃金は16%の引き上げで合意

(ハンガリー)

ブダペスト発

2022年12月20日

ハンガリー政府は12月16日、政府、雇用者団体、労働組合の各代表が15日に、2023年の月額最低賃金の引き上げについて合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この合意により、2023年の月額最低賃金は16%増の23万2,000フォリント(約8万3,520円、約1フォリント=約0.36円、なお現行は20万フォリント)、熟練労働者(高校卒業以上の資格者)に対しては14%増の29万6,400フォリント(26万フォリント)に引き上げられることになった。

また、政府は、これまで賃金の引き上げに伴う企業負担を緩和するため、雇用主負担となっている社会貢献税(注)もセットで引き下げていたが、2023年は社会貢献税率の引き下げを行わない。

熟練労働者の最低賃金は約73万人、未熟練労働者の最低賃金は約23万人に適用され、合わせて100万人近くが該当する。これはハンガリーの全雇用者数(470万人)の約20%だ。しかし、最低賃金額はそれ以外の賃金額にも波及し上昇効果をもたらすため、2023年は平均賃金も上昇する見込みだと政府は述べている。

また、最低賃金引き上げの協議では、政労使の3者は、経済状況が正当化され、必要であれば、今回合意された最低賃金引き上げ額を2023年内に調整する可能性について交渉することに合意した。

一方、協議では、労働組合代表のうちハンガリー労働組合総同盟(MASZSZ)は20%の最低賃金引き上げを求めていた。今回の引き上げについては、MASZSZのズラティ・ローベルト議長は「私たちはこの件に喜んでいるわけではないが、最低賃金の引き上げの実行はわれわれの責務でもあるので、協定に署名した」と説明している。

経済週刊誌HVG(12月15日電子版)は、この引き上げ幅は妥協の産物と指摘した。最低賃金は16%と大きな増加だが、他方で、より多くの労働者が対象となっている熟練労働者の最低賃金は14%増と低めで妥結しており、雇用者が財政的に実行しやすくなるということだ。14~16%の引き上げは、来年の平均インフレ率に近いかもしれない、とHVGは予測している。またHVGは、政府が2023年1月1日から年金の15%引き上げを実施することから、この15%は政府のインフレ率予想の表れだが経済専門家のインフレ率予想値は15%より若干高いと付け加えている。

(注)社会貢献税は、社会保険の雇用主負担分相当を税として納付する制度。従業員の給与その他の報酬総額の一定割合を雇用主が納税するが、税率は2016年末の28.5%から2022年時点で13%まで引き下げられている(2021年11月22日記事参照)。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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