ブルー・アクア、シンガポール発のエビの陸上養殖技術を日本含む世界へ

(シンガポール、日本)

シンガポール発

2022年12月22日

シンガポールのブルー・アクア・インターナショナルは、車エビなどの陸上養殖に取り組む養殖専門会社だ。同社を2009年に創業したファルシャド・シシチアン(Farshad Shishehchian)グループ社長兼最高経営責任者(CEO)は1213日、ジェトロのインタビューで、同社が確立した陸上養殖技術を日本を含む世界に展開したいと意欲を示した。同社長は「直近の進出先はオマーンとタイだ。日本への進出も視野に入れており、進出のためには良いパートナーが必要だ」と述べた。

ブルー・アクアは養殖用の餌や薬品、機器、コンサルタント業など養殖に係わる事業を展開する。本社のシンガポールのほか、タイ、インド、オマーン、米国に拠点を持つ。陸上養殖への参入は2016年。シンガポール北西郊外にある同社の養殖施設の生産能力は12月時点で、車エビが年間10万匹、ブラックタイガー(ウシエビ)が同25万匹、バナメイエビが同100トン。ほぼ毎日、国内の高級レストランやスーパーマーケット向けに出荷している。同社のエビは既存の輸入エビと比べると価格は3倍以上だ。しかし、ファルシャド社長は「毎日国内で生産・出荷しているため新鮮だ。だからこそ、エビを高価格で販売できる」と語る。

ファルシャド社長によると、同社が約3年をかけて開発した閉鎖循環式陸上養殖(RAS)技術は世界で最も飼育密度の高い養殖環境を実現している。また、循環式で海水の取り換えがほぼ必要がなく、コスト効率も高いという(注)。同社の養殖技術は現在、シンガポールやインド、中国など8カ国で特許登録されている。また、同社は今後、シンガポールで新たにニジマスの陸上養殖施設を建設する予定で、2024年までの完成を目指している。

写真 同社が飼育した車エビを手にするブルー・アクアのファルシャド・シシチアン・グループ社長兼CEO(ジェトロ撮影)

同社が飼育した車エビを手にするブルー・アクアのファルシャド・シシチアン・グループ社長兼CEO(ジェトロ撮影)

日系投資会社YCPホールディングス、投資を検討中

ブルー・アクアは現在、ニジマスの陸上養殖施設プロジェクトやエビの陸上養殖、餌などの事業資金として、総額5,000万~6,000万シンガポール・ドル(約49億~58億8,000万円、Sドル、1Sドル=約98円)の資金を調達中。ファルシャド社長によると、YCPホールディングス(本社:シンガポール、東証グロース上場)が現在、同社への出資を検討しているという。

ファルシャド社長は、畜産や酪農など地上での食品生産活動が気候変動など環境問題に直面していると指摘。その上で「向こう50年間で養殖や海産物が人々にとっての主要なタンパク源になると信じている」と強調した。

(注)同社が開発した超高密度養殖技術「混合栄養システム(MixotrophicTM system)の詳細は同社ホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(本田智津絵)

(シンガポール、日本)

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