グアナファト州とケレタロ州で2023年から環境税を導入

(メキシコ)

メキシコ発

2022年12月21日

自動車産業を中心に日系企業の進出が盛んな、メキシコのグアナファト州とケレタロ州で、2023年から環境税が導入される。グアナファト州は、11月30日付州官報で州財政法の改正を公布し、2023年1月1日に施行する。ただし、実際の納税は1~4月分も含めて、5月以降となる。ケレタロ州政府は、2021年12月23日付州官報で州財政法の改正を公布していたが、2022年は関連規則の制定が遅れたこともあり、環境税を州歳入法に盛り込まず、適用がなかった。2023年の歳入法には環境税収が盛り込まれており、適用が開始される。

環境税は、温室効果ガス(GHG)の排出に関するもの(両州)、産業廃棄物の廃棄と貯蔵に関するもの(両州)、土地や河川などへの排水に関するもの(グアナファト州)、非金属鉱物の採掘に関するもの(ケレタロ州)に分かれる。この中で、進出日系企業に影響を与えるのは、GHGと産業廃棄物に関するものだ。GHGの排出に関しては、グアナファト州で二酸化炭素(CO2)1トン当たり250ペソ(約1,725円、1ペソ=約6.9円)、ケレタロ州で同5.6UMA(注、2022年時点で538.83ペソ)が課税される。産業廃棄物に関しては、グアナファト州で1トン当たり100ペソ、ケレタロ州で同1.25UMA(2022年時点で120.28ペソ)となる。両州の各税目別課税概要は、添付資料の表を参照。

自動車産業など特定分野の大企業から適用開始か

環境税の課税対象としては、企業規模別の例外措置が盛り込まれていないため、中小企業であっても原則として対象になりえる。産業廃棄物については、州管轄の鉄スクラップなどの特別処理廃棄物や連邦管轄の危険廃棄物の定義が明確で、廃棄のためには連邦政府、あるいは州政府の認可が必要となるため、既にそれらを扱う企業が登録されており、廃棄量も把握できる。しかし、GHGに関しては、全ての事業所に排出量の計測と記録を義務付けていないため、当面はこれらの記録が既に存在する企業が対象になると予想される。

メキシコではエコロジーバランス・環境保護法(LGEEPA)の第109-BIS条に基づき、連邦政府(環境天然資源省)、州政府、市町村政府が環境汚染物質の排出や廃棄を記録し、管理することを義務付けている。この記録制度は汚染物質排出・移転登録(RETC)と呼ばれ、産業分野に応じて連邦政府管轄か、州管轄かが異なる。連邦管轄となるのは、炭化水素、化学、塗料・染料、冶金、自動車産業、製紙、セメント、アスベスト、ガラス、発電、危険廃棄物処理の分野の事業所であり、州政府はこれら以外の産業分野において、RETCの対象汚染物質および報告基準を定めるメキシコ公式規格(NOM-165-SEMARNAT-2013)の対象物質を排出する事業所を管轄する。連邦管轄のRETCに登録された事業所と、汚染物質ごとの年間排出量のデータは、メキシコの環境天然資源省(SEMARNAT)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロードできる。

なお、グアナファト州については、官報公布から適用までの期間が短く、産業界から、十分な相談もなく急きょ導入されることに対する強い反対があるため、施行が延期される可能性はある。

(注)罰金や制裁金の単位として用いられる法定価額算出係数。Unidad de Medición y Actualización(UMA)。2023年のUMAは未発表。2022年時点では日額で1UMA=96.22ペソ。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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