カナダ政府、新車のハイブリッド車と電気自動車に車両接近通報装置の搭載を義務付け

(カナダ)

米州課

2022年12月23日

カナダのオマール・アルガブラ運輸相は12月22日、カナダ政府が自動車安全規則を改正し、新車のハイブリッド車と電気自動車に対し、対人接触事故防止のため、車両接近通報装置(以下、サウンド・エミッター)の搭載を12月21日から義務付けることとしたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ハイブリッド車や電気自動車は静音モーターを搭載しており、低速ではほとんど音を発しないため、道路上で走行していることが認知されにくく、歩行者や障がいがある人にとって接触のリスクが高い。

改正版規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2021年12月21日以降、車両総重量が4,536キロ以下の全てのハイブリッドおよび電気式の乗用車、多目的乗用車、トラック、バスおよび低速車両は、最低音響量の規定に準拠する必要がある。

音の種類は自動車メーカーが決めることができるが、音量とピッチは、車両が加速しているか減速しているかを路上にいる人が聞き分けられるものでなくてはならない。

改正版規則の背景説明によると、新規則を既存の車両にも適用することを望む声もあったが、適用対象は新車のみとし、既存車両は今回の対象には含めないとしている。新車および輸入車の安全基準の規制は連邦政府の責任だが、公道の使用と運転免許証、および販売・購入後のパーツの取り付けを含む車両の保守、改造、使用に関する規則を管轄するのは州および準州政府で、同様の音響要件を既存の旧世代の小型ハイブリッド車(HEV)にも適用するかの判断は、州や準州の裁量に委ねるとしている。

カナダでは2013年から2017年までの5年間で、小型HEVと歩行者の接触により推定19人が死亡、991人が負傷、小型HEVと自転車の衝突により3人が死亡し523人の負傷者が発生したという統計データがある。事故のリスクはカナダ国外にも共通の問題で、2016年には国連および米国国家道路交通安全局(NHTSA)が、それぞれ小型HEVの最小音響要件を定めた規制を採択した(注)。NHTSAの調査によると、HEVは、ガソリン車より歩行者と接触する衝突するリスクが約20%高く、自転車との接触のリスクは約50%高いというデータが出ている。カナダでの導入については、約10年前にケベック州の障がい者団体から嘆願書が提出されて以来、政府が検討を進めており、2021年4月には運輸相が今後導入することを提案し、2023年までに販売される全ての車両にサウンド・エミッター搭載を義務付けるようにする計画と発表していた。

カナダ政府は、2026年までに国内で販売される新車の20%以上、2030年までに60%以上、2035年までに100%をZEV(ゼロ・エミッション車)とすることを義務付けており(2022年12月22日記事参照)、静音車両が増えることが予想される中、装置の搭載義務化が始まったことは意義が大きい。

(注)2016年国連での国際基準の採択を受け、日本でも同年10月からハイブリッド自動車などへの車両接近通報装置の搭載が義務付けられている(2016年10月7日付国土交通省発表)。

(高山さわ)

(カナダ)

ビジネス短信 9ef874794518344c