2023年の最低賃金を20%引き上げ、国境地帯の企業への影響大

(メキシコ)

メキシコ発

2022年12月05日

メキシコの最低賃金委員会(CONASAMI)は12月1日、2023年の最低賃金引き上げ率を20%に決定したことを発表した(CONASAMIプレスリリース12月1日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。メキシコの最低賃金は、一般最低賃金と特定業種別最低賃金に分かれ、一般最低賃金は北部国境地帯とそれ以外に大別される。最低賃金の上昇率は、憲法が定める理念を満たすための購買力回復に向けた上昇分(Monto Independiente de Recuperación:MIR)とインフレ考慮分で構成される。CONASAMIによると、北部国境地帯以外の一般最低賃金は現状の日給172.87ペソから207.44ペソ(約1,431円、1ペソ=約6.9円)へと34.57ペソ(15.72ペソのMIRと、10%のインフレ考慮分の合計)引き上げられた(添付資料表参照)。また、北部国境地帯の一般最低賃金は、現状の260.34ペソから312.41ペソとなり、52.07ペソ(23.67ペソのMIRと、10%のインフレ考慮分の合計)の引き上げとなる。

今回の一般最低賃金の上昇率については、雇用主側の代表であるメキシコ経営者連合会(COPARMEX)も合意している。COPARMEXの12月1日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、引き上げ後の最低賃金は基礎物資を1.5人分賄うことができる金額であり、メキシコの平均世帯構成(4人、うち2人が就労者)を考慮するとまだ不足しており、2026年までは段階的に引き上げて行き、憲法が定める世帯の基礎物資を賄う最低限の賃金水準を確保することを目指すとしている。

国境地帯の一般工員は労使交渉にかかわらず大幅な賃上げに

最低賃金の上昇率は、最低賃金以上で働く労働者の給与改定率には直接影響しない。最低賃金以上で働く労働者の給与については、毎年インフレ率を参考に企業の業績などを考慮した労使交渉によって決定される。北部国境地帯を除けば、製造業の工場で働く一般工員の給与は、最低賃金の水準よりもかなり高い。従って、2023年の賃金改定は基本的にはインフレ率(2022年11月15日時点で年率8.14%)を基準に交渉が行われる。

しかし、北部国境地帯の場合は状況が異なる。北部国境地帯の最低賃金は、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の対米移民抑制を視野に入れた国境経済振興策により、2019年に一気に2倍に引き上げられており(添付資料表参照)、ティファナなど北部国境都市の場合、2022年時点で既に一般工員の賃金が最低賃金と同じか、わずかに上回る水準の企業が多い。これらの企業は、インフレ率程度の賃金改定だと2023年の最低賃金を下回ってしまうため、労使交渉にかかわらず最低賃金水準までは不可欠になり、大幅な人件費の上昇が避けられない状況だ。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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