ビンファスト、ベトナムのEVを米国に初輸出

(ベトナム、米国)

アジア大洋州課

2022年12月06日

ベトナム地場自動車メーカーのビンファストは11月25日、北部ハイフォンの工場で製造した自社ブランドの電気自動車(EV)999台を米国向けに初めて輸出した。輸出を祝う式典には、ファム・ミン・チン首相ら政府要人も参加。チン首相は「歴史上初めて、ベトナムで製造されたEVがベトナムのブランドとして、世界の自動車市場に参入する重要な節目だ」と、ビンファストの事業をたたえた。

今回輸出されたのは、5人乗りスポーツ用多目的車(SUV)タイプのバッテリー電気自動車(BEV)「VF8」。エコモデルの最高出力は260キロワット(kW)で、フル充電で約420キロ走行できるという。米国では、バッテリー込みで5万7,000ドルから販売されるほか、車体価格4万2,200ドルに加えて、毎月169ドルを支払うことでバッテリーを利用できるサブスクリプションプランも提供される。

ビンファストは海外市場で、VF8と7人乗りのBEV「VF9」を合わせて6万5,000台の予約を確保しているという。今回の輸出分はハイフォンの港で船積みされ、約20日かけて米国カリフォルニアの港に到着後、2022年内に米国の顧客に納車される見込みだ。これに続き、カナダと欧州向けにも輸出し、2023年頭に納車を開始する。また、VF9も2023年3月までにベトナムと海外での引き渡しを開始する計画だ。個人顧客に加え、法人顧客への販売にも力を入れており、11月には米国最大級の自動車サブスクリプションサービス会社のオートノミー(Autonomy)から2,500台を受注した。

ビンファストは2024年7月の稼働を目指して、米国ノースカロライナ州にEVの生産工場を建設する計画だ(2022年4月4日記事参照)。今回の式典に参加したマーク・ナッパー駐ベトナム米国大使は、ビンファストが米国に工場を建設し、何千人もの雇用を創出することに感謝を示した。なお、ビンファストは4月に米国証券取引委員会(SEC)に米国での新規株式公開(IPO)を申請しており、2023年1月以降のIPO実施も目指している。

ベトナム国内市場では、ビンファストは2021年12月から2022年8月にかけて、小型SUVタイプのBEV「VFe34」を2,293台販売している。一方、直近では部材調達の遅延を背景に生産が滞り、販売台数が落ち込んでいた。7月は62台、8月は5台にとどまり、9月と10月の販売台数はいまだ公表されていない。

(庄浩充)

(ベトナム、米国)

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