ジェトロ、香港税関向け真贋判定セミナー開催、模倣品撲滅へ日本企業との連携強化

(香港、日本)

香港発

2022年12月08日

ジェトロは121日、香港税関と国際知的財産保護フォーラム(IIPPF、注1)との共催で、香港税関職員を対象とした知的財産権保護セミナーをハイブリッド形式で開催した。セミナーには日本企業4社が講師として登壇し、来場者とオンライン参加者合計で約80人の税関職員が参加した。

写真 知財保護セミナーの様子(香港税関提供)

知財保護セミナーの様子(香港税関提供)

セミナー冒頭では、香港税関の黄蕙荃(ウォン・ワイチュン)著作権・商標調査科高級監督が主催者としてあいさつ。「中国国務院が2021年10月に公表した「『第14次5カ年(2021~2025年)規画』国家知的財産権保護と運用計画」(注3)に基づき、香港の知的財産取引センターとしての発展を支援する」と述べた。今後について黄高級監督は「香港税関は中国内やその他地域の税関組織と協力し、通関監督、データ交換、知的財産権保護などの分野や、ジェトロを含む業界関係者との交流を強化し、各種侵害行為に効果的に対処できるように努める」との決意を明らかにした。

登壇企業には、香港税関の要望も踏まえつつ、スポーツ用品や衣類、精密機器などを扱うメーカー4社を選定し、協力を得た。各社は自社製品やライセンス商品の模倣被害事例や真贋(しんがん)判定時に注意すべきポイントなどを説明。質疑応答では、税関職員から多くの質問が投げかけられ、活発な交流が行われた。セミナー会場には、日本企業が提示したサンプル品(真正品、模倣品)も展示され、税関職員が手に取り、その違いを確認する姿も見られた。

香港税関は、香港の知財保護の取り組みや法規制の根拠、知財権の事前登録手続き(注2)などについて説明した。意見交換セッションでは、日本企業から、香港の知財権の事前登録手続きに際して必須とされている「有資格鑑定人」の要件(注4)について、香港在住者であることが望ましいとされていることから、要件緩和を求める要望があった。これに対して、香港税関は(1)書類ベースの手続きは日本でオンライン対応可能、(2)被疑侵害品の真贋判定自体は映像や画像では正確性に欠けるため、鑑定人が香港を来訪し、目視で確認する作業が必須、(3)ただし、香港来訪が1回で済むように一定の便宜を図ることは可能との見解を示した。原告(香港税関)側証人として裁判所に出廷協力を求められた際に同鑑定人が対応する必要がある点については、税関の権限外のため、回答が難しいとした。

(注1)IIPPFは、海外における模倣品・海賊版などの知的財産権侵害問題の解決を目指す企業・団体によって2002年4月に設立され、90団体・207企業が参加している(12月時点)。海外での模倣品対策に対応すべく、各国・地域政府機関などとの真贋(しんがん)判定セミナーを複数実施している。

(注2)登録制度について、ジェトロ「香港における税関登録関連調査報告書PDFファイル(975KB)」(2017年3月)を参照。

(注3)同規画について、ジェトロウェブサイト(中国-知的財産に関する情報-中国政府の動き)に掲載の中国語原文PDFファイル(1.1MB)または日本語仮訳PDFファイル(484KB)を参照。

(注4)同鑑定人の任命要件についてはこのほか、権利者の企業の歴史や製品ラインアップ、生産設備などについて精通していることや、税関が押収した商品の真偽を判別できる能力があることなどの必須条件を定めている。詳細は注2に記載の報告書4ページを参照。

(島田英昭)

(香港、日本)

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