スタートアップイベント「スラッシュ」、ヘルシンキで開催、ウクライナ侵攻の影響色濃く

(フィンランド、欧州)

ロンドン発

2022年12月08日

欧州最大級のスタートアップイベント「スラッシュ」が11月17日、18日にフィンランドのヘルシンキで開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされ、世界各国から4,600人のスタートアップ関係者、2,600人の投資家などを含む1万2,000人が参加した。

会場では、環境や医療、モビリティー、Web3.0(注)などに関するさまざまな分野のスタートアップや、スタートアップとの協業を進める欧米の大企業がブース展示した。

地元大手企業のノキアは自社ブースで、最新の通信技術やブロックチェーンなどを用いたデジタルソリューションを展示。同社担当者はスタートアップとの協業によるオープンイノベーションにも積極的に取り組んでいるとし、日本では2022年5月、東京・六本木の先端技術センターをリニューアルし、外部企業にローカル5G(第5世代移動通信システム)環境を提供し、デバイスやソリューションの検証を可能にするサービスを開始したことを挙げた。

例年同様に、活発に商談やネットワーキングが行われる一方、ロシアのウクライナ侵攻の影響も各所で見られた。

初日のメインステージでは、欧州における戦略的自律をテーマに、フィンランドのサンナ・マリン首相が登壇し、エネルギーや医療、食料分野に加え、社会のデジタル化が今後進む中、デジタル技術に関する自律性を高めていくことが特に重要とし、同分野への継続的な投資と民主主義国家間での連携が必要と訴えた。また、フィンランド国内に関しては、2030年までに研究開発費支出をGDP比4%に引き上げることを目標とする与野党合意に言及し、国内でのイノベーション創出を後押しする強い姿勢を示した。

また、会期中に賞金100万ユーロをかけて行われるピッチコンペティション「Slush100」では、ロシア人起業家が英国で起業したITスペシャリストや技術系起業家のための移民支援プラットフォームを提供するイミグラム(Immigram)の優勝が発表された。しかし、その後、中・東欧のスタートアップ関連メディアのAIN.Capitalは、イミグラムがロシアでロシア人スタッフを抱えていることや、同社サービスがロシア人の英国への移住に利用され、国際制裁によってロシアに科せられる経済負担の影響を軽減していると指摘する記事を配信したことなどを受け、スラッシュ主催者は11月21日に同社の優勝の取り消しを発表した。

写真 ノキアのブース(ジェトロ撮影)

ノキアのブース(ジェトロ撮影)

(注)次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化して個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴付けられるWeb2.0に続くもの。

(伊藤吉彦)

(フィンランド、欧州)

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