国民年金保険料と受給開始年齢引き上げの議論が本格化

(韓国)

ソウル発

2022年12月12日

韓国保健福祉部は12月8日、国会年金改革特別委員会との共催で「国民年金専門家フォーラム」を開催した。国民年金財政計算を再計算(第5次国民年金財政計算)するにあたり主要論点を整理する目的で、2022年9月に続いての開催となった。

今回は、人口構造の変化に伴う国民年金財政の持続可能性の必要が指摘されている中、第1セッションでは、国民年金研究院のユ・ホソン研究委員が、年金財政の安定化のための保険料率の引き上げや最低給付水準などを考慮した上で、保険料率(注1)を15%まで段階的に引き上げる案を提示した。これにより、第4次国民年金財政計算で2057年とされた基金の枯渇を最長2073年まで延長可能と述べ、年金財政の安定化のための適切な保険料引き上げが必要と指摘した。さらに、もう1つの主要論点となる受給開始年齢の引き上げについては、EUの平均的な年金受給年齢(68歳)など、海外事例の検討を通じた調整案(注2)などを提示した。

第2セッションでは、受給開始年齢の引き上げにより、退職年齢と受給開始年齢に開きが出るため、この間の所得の空白をどのように埋めるかという労働市場改革について議論が行われた。韓国開発研究院のイ・テソク人口構造対応研究チーム長は「韓国の主な職場の退職年齢は50歳前後から55歳前後と、法定定年の60歳よりも若く、性別、学歴、業種、職務によってもその差は大きい」と指摘しつつ、「企業の人事管理制度改革を通じた継続雇用の拡大や高齢者層の生産性向上のための政・労・使の協力が必要」と強調した。

主催者を代表し、保健福祉部の李基日(イ・ギイル)第1次官は「急速な少子高齢化のため、国民年金の持続可能性の向上はこれ以上先送りできない重大な問題」と強調し、「高齢化に伴う生産年齢人口の減少は国の経済にも大きな影響を及ぼす重大な事項であり、本日のフォーラムを通じ、国民年金の財政安定化のための保険料率の引き上げと労働市場改革の方向性が議論できたことは大きな意義があった」と述べた。

(注1)韓国で1988年に国民年金法が導入されて以降、原則、基準所得月額(標準報酬月額)の9%を国民年金保険料として徴収している。

(注2)国民年金の受給開始年齢は段階的引き上げ中で、出生年が1963年以降の場合、65歳から支給される。

(当間正明)

(韓国)

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