連邦労働法を改正、有給休暇が6日増加

(メキシコ)

メキシコ発

2022年12月28日

メキシコ政府は12月27日、連邦官報で連邦労働法(LFT)の改正令を公布した。同改正はLFT第76条と第78条を改正する内容で、勤続開始から1年が経過した労働者に与えられる有給休暇の数を従来の6日から12日に増やし、その後4年間(従来は3年間)は毎年2日有給休暇を増やし、5年後に20日とする。その後は5年の勤続で2日ずつ増えていく(改正LFT第76条)。詳細は添付資料の表のとおり。また、LFT第78条も改正し、労働者は連続で最低12日間以上の休暇を取得できると規定したため、雇用主は労働者が望めば12日間(従来は6日間)の連続休暇を与える必要がある。ただし、労働者が望めば、12日間の連続取得ではなく、分割取得も可能。改正の施行は2023年1月1日。

今回の改正が労働者の既存の休暇日数に与える影響は、改正令の条文上では明確ではないが、同改正の法案を作成した野党・市民運動(MC)のパトリシア・メルカド上院議員の2022年12月16日付ツイッターによると、2023年以降に勤続年数が新たに1年増えた時点で、与えられる有給休暇数が改正後の日数まで増えることになるようだ(注)。

中小企業を中心に人件費が上昇

今回の改正の背景には、メキシコは他国と比して法定有給休暇の日数が少なく、労働時間も長いことから、多くの労働者が労働にストレスを抱えているため、休暇を増やすことにより労働者の人権を保護するとともに、労働生産性の向上を図る狙いがある。ワールド・ポリシー・アナリシス・センターのデータ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで比較すると、メキシコの従来の法定有給休暇数は、ブラジル(30日)、ペルー(30日)、チリ(15日)、コロンビア(15日)、アルゼンチン(14日)など中南米主要国の後塵(こうじん)を拝しており、韓国(15日)や日本(10日)にも及ばない。OECDの統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、メキシコの労働者の平均労働時間は年間2,128時間に達してOECD加盟国中最多、日本の1,607時間と比べてもかなり長い。メキシコの大手求人ポータルサイトOCCムンディアルのアンケート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます調査によると、アンケート調査に回答した労働者の63%が仕事にストレスを感じている。

有給休暇の増加は、労働者の労働生産性を向上させるとして賛成する意見も多いが、メキシコにはLFT第80条に基づき、日給の25%以上に相当する休暇手当の制度があり、有給休暇の増加は企業の人件費の上昇に直結する。特に、多くが法定最有給休暇日数しか労働者に与えていない中小企業に対する影響が大きく、人材紹介大手マンパワー・メキシコのアルベルト・アレシ社長は、中小企業の労働コストは2%上昇すると指摘している(主要各紙2022年11月14、15日)。

(注)2021年6月1日に採用された労働者の場合、2022年6月1日時点(勤続1年達成時点)で改正前のLFTに基づき6日間の有給休暇が与えられているが、改正施行日の2023年1月1日に有給休暇が増えることはなく、同労働者の勤続年数が2年になる2023年6月1日時点で14日の有給休暇が与えられることになる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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