欧州委、付加価値税制度のデジタル化推進による効率改善を提案

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月12日

欧州委員会は12月8日、EU域内における付加価値税(VAT)徴収システムのデジタル化を進めるVAT指令など、3つ規則と指令の改正を提案した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委によると、2020年にEU加盟国の税務当局の税収見込みに対する実際の徴税額は9.1%に相当する927億ユーロ少なかった。今回の提案は、VAT申告手続きのデジタル化によって域内の手続きの一本化を進めることで、不正行為などによる徴税の機会損失の低減を図ると同時に、複数の加盟国で販売を行う企業の手続き負担を軽減するなど、VAT制度の効率改善が目的だ。

2021年7月導入のワンストップショップ制度を拡充

提案内容は第1に、域内で統一的に運用する電子インボイス制度を構築し、VAT申告をリアルタイム化すること。現状では、EU域内で販売を行う企業は所在地の税務当局に対し、域内での財やサービスの売り上げに関する加盟国別の情報を四半期単位や月単位の頻度で申告している。電子インボイス制度では、取引ごとに必要な情報が税務当局に集約されるため、当局にとっては時間差を利用した不正行為などを防止することで徴税機会の損失が減り、企業にとってはこれまでのような申告は不要となる見込み。

第2に、民泊仲介サービスや車両手配仲介サービスを主な対象に、これらサービスを仲介するプラットフォーム事業者に売り上げに対するVATの徴収と当局への納付を確保するよう義務付ける。現状では実際のサービス提供者がVAT徴収を行わない慣行がみられるため、新しいルール下ではそのような場合、プラットフォーム事業者がサービス提供者に代行してVAT徴収し、税務当局に納付する義務を負う。欧州委によると、カナダなどでは同様の徴税手法が機能しているという。

第3に、VAT登録の一元化を一層進める。既に電子商取引を行う事業者を主な対象として、2021年7月からワンストップショップ(OSS)制度が導入され、VAT登録がオンラインに一元化されている(2021年6月30日記事参照)。他方、これに該当しない事業者は現在も、販売を行う加盟国でそれぞれVAT登録を行うことを求められる。今回の提案では、OSSを拡張し、複数の加盟国で販売を行う事業者や、複数の加盟国に在庫をストックする事業者がオンラインで一元化されたVAT登録のみで事業を行うことを可能にする。

3つの改正案は原則として、EU理事会(閣僚理事会)の審議を経て採択され、規則は2025年初からの適用、VAT指令も施行後、主要な部分は加盟国が2024年末までに必要な国内法改正を行い、同じく2025年初からの適用を予定している。

(安田啓)

(EU)

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