EU、電子商取引にかかる付加価値税の改正ルール施行

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月30日

EUにおける電子商取引(EC)に適用される付加価値税(VAT)に関する一連の規則や指令の改正が7月1日から施行される。VAT登録と会計処理を一元化する「ワンストップショップ(OSS)」を導入するほか、少額輸入におけるVAT免除が撤廃される。

詳細は欧州委作成の日本語版注釈で確認を

事業者にとっては、OSSの導入が大きな変更点となる。従来、EC事業者は、加盟国がそれぞれ定める基準額を超える販売を行う場合、該当する全ての加盟国においてVAT登録を行う必要があった。新ルールでは、基準額がEU全域での販売額1万ユーロに変更され、事業者は電子ポータルのOSSからVAT登録を行うのみとなり、各加盟国での登録は不要になる。欧州委によれば、事業者はEC販売にかかる手続き費用を最大95%削減できる。OSSは既に2015年から電気通信や放送サービスなどにおけるVAT登録で限定的に運用されており、欧州委は同制度を通じたVAT登録及び会計処理の一元化が軌道に乗ったと判断、VAT徴収の拡大にもつながっていることから、本格的な導入に踏み切った。

また従来、EU域外の事業者による22ユーロまでの少額商品のEUへの輸入では、VATは免除されていたが、7月1日からEUへの輸入貨物は全てVATの対象となる。欧州委によれば、少額輸入に対するVAT免除は悪質な域外の事業者により乱用され、虚偽の申告により年間70億ユーロに上る脱税行為が発生していた。代替的に、少額輸入を対象にした新制度として「輸入ワンストップショップ(IOSS)」が導入される。150ユーロまでのEU域外の商品を域内の顧客に販売する供給者は、域内の事業者か域外の事業者かを問わずVATを徴収し、IOSSに登録することにより簡易な手続きでVAT申告・支払いを行うことができる。消費者にとっては同制度の結果、注文した商品の受け取りの際に税関やクーリエサービス事業者からVATの支払いを請求されることがなくなる、という利点が想定される。

その他、VAT徴収を確実にする目的で、オンラインのインターフェースを介して商品販売を促進するマーケットプレースやプラットフォームを、自ら商品を受領し供給した「みなし供給者」と定義し、VATの適用対象とすることを明確化する。

欧州委は2020年9月、ECに適用される一連のVATルール改正に関する注釈を公表しており、現在は日本語版も欧州委ウェブサイトに公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている(注)。ルール改正は当初、2021年1月1日の施行を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う各種制限に配慮して7月1日に適用開始が延期されていた。

(注)日本語版は「vatecommerceexplanatory_28102020_ja.pdf」よりダウンロード可能。

(安田啓)

(EU)

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