2022年の経済は原油価格上昇と観光業回復で新型コロナ禍を脱却

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2022年12月28日

アラブ首長国連邦(UAE)の2022年の経済は、油価の上昇や観光業の回復により、好調だった。

IMFは、10月に発表した「世界経済見通し」で、UAEの2022年の実質GDP成長率を5.1%と予測し、4月の予測(4.2%)から0.9ポイント上方修正した。さらに、11月に実施した対UAE「4条協議訪問」(注1)に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、「6%以上の成長を見込む」とした。UAE中央銀行も2022年の成長率を7.6%と見込んでいる〔12月19日付UAE国営エミレーツ通信(WAM)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

高成長の要因としてIMFとUAE中銀がともに挙げたのが、石油・ガス部門と観光部門だ。原油価格はウクライナ情勢の影響もあって一時高騰し、現在も高水準で推移している。生産量もOPECプラスの合意(注2)に従って9月までは増産を継続し、成長に寄与した。上述のUAE中銀の成長率予測でも、石油部門は11.0%となっている(非石油部門は6.1%)。

観光客の戻りも順調だ。2022年のドバイへの宿泊を伴う来訪者数は、10月時点で1,140万人となり、前年同時期(488万人)と比べて2.3倍となった。新型コロナウイルス感染拡大以前の2019年水準(1~10月の合計:1,350万人)の84%まで回復している。UAEは新型コロナに関する水際対策を早期から緩和しており、国外からの観光客呼び込みに積極的だった。2022年2月26日からはワクチンの所定回数を接種済みであれば、出発地でのPCR検査が不要となり(2022年5月2日記事参照)、現在は入国規制を撤廃している。2021年10月から2022年3月まで開催された「2020年ドバイ国際博覧会」も呼び水となった。

また、さらなる経済成長や居住者の生活向上に向けた制度改革も行われており、2022年の最大の変化は公的な週休日の変更だった。2022年1月1日から、連邦政府機関の公的な週休日が従来の金・土曜日から土・日曜日に変更となった(2021年12月8日記事参照)。併せて、政府・教育機関は金曜日午後も休みとなり、2.5日休日の週末となった。アジアや西欧諸国の営業日との間の1日のギャップをなくし、グローバルビジネスを円滑化することと、週末を長くして生産性とワークライフバランスを向上することが狙いだ。

(注1)IMF協定第4条の規定に基づき、IMFは通常、加盟国と経済状況や政策について毎年協議を行う。IMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・金融情報を収集するとともに、理事会での議論の土台となる報告書を作成する。

(注2)OPECプラスはOPEC加盟国と、ロシア、メキシコなど非加盟の産油国で構成する。9月までは増産を維持したが、11月以降は大幅減産で合意した(2022年10月6日記事参照)。

(山村千晴)

(アラブ首長国連邦)

ビジネス短信 22ec4360afff4517