コスト圧力抱えつつ、現地需要増と生産投資拡大へ対応模索、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(中南米編)

(中南米、メキシコ、コロンビアベネズエラ、ペルー、ブラジル、チリ、アルゼンチン)

米州課

2022年12月27日

ジェトロは12月26日、中南米に進出する日系企業を対象とした現地での活動実態に関するアンケート調査(注1)「2022年度海外進出日系企業実態調査(中南米編)」の調査結果を公表した。調査結果によると、世界的なインフレに伴うコスト圧力を抱えつつも、2022年の在中南米日系企業の営業利益黒字見込みの割合は前回調査比で拡大している。

2022年の営業利益黒字見込みの割合は63.8%に達し、新型コロナ禍前の2019年を上回っている。営業利益見込みの改善理由は「国内購買力の増加」が際立っている。「販売効率改善」や「人件費削減」といった新型コロナ禍以降実践してきた企業努力や、「輸出先・輸出量増加」という輸出環境の改善も目立った。

2023年の営業利益見通しのDI値(注2)も39.4ポイントと、2018年以来の高水準となった。これは、最大のウエートを占めるメキシコが50.5ポイントと高かったためだ。メキシコの改善理由は「新型コロナに起因する反動増」に加え、「現地市場での購買力増加」「生産能力増強による販売増」が主となっている。

一方、在中南米進出日系企業の間では、いまだ世界的なインフレ高進によるコスト上昇圧力の懸念が残っている。2023年に営業利益見通しが悪化する理由としては、「物流コスト上昇」を筆頭に「管理費・燃料費・人件費・原材料・部品コストの上昇」がいずれも3割を超えている。

サプライチェーン見直し予定では、設備投資に対する生産新規投資の増強が増加

今後にサプライチェーンを見直す割合は、新型コロナ禍から現在までの見直し実績より7.7ポイント増加した。見直し内容で「生産新規投資/設備投資」と答えた割合は26.7%と、新型コロナ禍から現在までの見直し実績より14.4ポイント上昇した。メキシコとブラジルは新型コロナ禍から現在までの実績では10%台だったのに対して、今後の予定では30%台に達している。メキシコでの新規投資拡大は北米自動車産業への部品供給を中心とした生産・供給への対応が寄与した。ブラジルでは消費市場拡大への対応による生産・販売拡大への対応が多い。

(注1)調査実施期間は8月24日~9月28日。調査対象は中南米7カ国に進出する日系企業(日本側による直接、間接の出資比率が10%以上の企業)730社。有効回答数は482社(有効回答率66.0%)。

(注2)Diffusion Indexの略で、営業利益が「改善」する企業の割合から「悪化」する割合を差し引いた数値。

(大久保敦)

(中南米、メキシコ、コロンビアベネズエラ、ペルー、ブラジル、チリ、アルゼンチン)

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