戦時下も成長、ウクライナのスタートアップ、ジェトロがウェビナー

(ウクライナ、日本)

欧州ロシアCIS課

2022年12月22日

ロシアによる軍事侵攻や景気後退といった状況にもかかわらず、ウクライナのスタートアップは急成長している。戦争の影響からヘルスケア分野では新しいソリューションの開発が活発だ。ジェトロは12月14日、Ago-ra IT Consulting 協力の下、J-Bridgeウェビナー「隠れたIT大国ウクライナにおける注目のヘルステック企業の魅力」を開催。専門家がウクライナのスタートアップ市場の概況について解説し、ウクライナのスタートアップ企業が自社製品を紹介した。

ウクライナIT企業と日本企業の協業支援を行うAgo-ra IT Consultingの柴田裕史最高経営責任者(CEO、注)によると、欧米諸国がウクライナの優秀なIT技術者への関心を高めているほか、アウトソーシングだけでなく、自社製品を開発するプロダクトカンパニーとしてのウクライナIT企業の成長にも注目が集まっている。オランダのスタートアップ・エコシステム・データ収集分析機関「ディールルーム・コ」によると、2022年のウクライナ全体のスタートアップ企業価値は2020年と比べ3.3倍の233億ユーロに達する見通しだ。ウクライナでは既に医療のIT化が進んでいたが、戦争という特殊な事情を背景に、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やウエアラブル機器を活用したサービスのほか、遠隔医療、人工知能(AI)を活用した診断、創薬が登場している。

ウェビナーでは、ウクライナのヘルステックスタートアップ企業3社がプレゼンテーションを行った。iCardy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、心血管疾患の予防を目的とした心臓の常時監視ソリューションを提供する。使用者は同社が開発した専用デバイスを体に装着することで、心臓の状態を継続的かつ長期的にモニタリングでき、必要に応じて専門医師にオンライン相談をすることができる。

InDevLab外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、患者と医師のマッチングや診断、処方箋の提供などの機能を備えた遠隔医療アプリのほか、格納場所や形式が異なるデータを統合し、医師がデータに基づいた分析・意思決定を行えるようサポートする統合医療情報プラットフォームを提供する。サイバーセキュリティーやITインフラ導入の豊富な経験を有する同社は、東欧、中東、アジア、アフリカ、中南米にセキュリティーソフトウエア商品も展開している。

Movadex外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、生活習慣を最適化するためのAI搭載アプリを開発・提供している。使用者の心理的状況やメンタルへの影響分子をAIが分析し、メンタルヘルス管理をサポートする。

J-bridge」は、ジェトロがオープンイノベーションを通じて海外企業と日本企業の協業・M&Aを支援するために設けたビジネスプラットフォーム。今回のウェビナーは、ジェトロが2022年9月に全社的なウクライナ支援チームを立ち上げたことを受け、同国支援の一環で開催した。

(注)同社はロシアによる軍事侵攻以降、拠点をウクライナの首都キーウ(キエフ)からポーランドのワルシャワに移動した。

(菱川奈津子)

(ウクライナ、日本)

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