シネマ米上院議員が民主党を離党し無所属へ、民主党多数は変わらず

(米国)

ニューヨーク発

2022年12月13日

米国連邦議会上院で民主党に所属していたキルステン・シネマ議員(アリゾナ州)は12月9日、民主党を離党して無所属になると発表した。

11月8日の連邦議会中間選挙の結果を受け、2023年1月3日から開始する第118議会(~2025年1月3日)の上院(定数100)の党派別議席数は、民主党51、共和党49となっていた(注1)。シネマ議員の離党により、民主党50、共和党49、無所属1という構成になる。ただし、上院では副大統領が議長を務めるため、法案などへの投票で賛否が同数となった場合、カマラ・ハリス副大統領が1票を投じることで民主党が多数派を形成できるという現第117議会(2021年1月3日~2023年1月3日)の構図が引き継がれることになる。

また、上院トップを務めるチャック・シューマー院内総務(民主党、ニューヨーク州)はシネマ議員の委員会職(注2)を維持するとしており、シネマ議員も「私の価値観や行動は何も変わらない」と発言している。シネマ議員はもともと、民主党中道派のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)とともに、バイデン政権と議会民主党が推進する法案内容に反対の意を表明するなど、党内主流派とは異なる投票行動を取っており、同議員の離党が政治に与える影響は大きくないとの見方が出ている。

シネマ議員はこの決断に関して、選出州のアリゾナ州の地方紙「アズセントラル」(電子版12月9日)への寄稿文で、米国では年々、民主党と共和党の2大政党による党派政治が極端になっており、最も過激な声が各党の優先事項を決める状況となっていると、現状を批判している。その上で「アリゾナ州民は、いずれかの党しか選べないことを間違いだと信じており、私は連邦下院と上院の選挙に立候補した際、アリゾナ州民に異なる結果を約束した。私は党派に属さずに誰とでも協働し、永続的な結果を達成すると誓った」とし、「だからこそ、私はワシントンの崩壊した党派システムからの独立を宣言することで、増えつつある党派政治を拒絶するアリゾナ州民に加わることにした」と、決断の経緯を説明している。

一方、シネマ議員による離党の動きは、同議員が2024年11月に直面する選挙に向けた準備とみる向きもある。民主党から立候補する場合、同州選出の現職連邦下院議員で、上院への立候補を検討しているとされるルーベン・ギャレゴ氏と予備選挙で戦うシナリオが有力視されているが、一部の世論調査では、ギャレゴ氏が有利との結果が出ている。シネマ議員は2024年の選挙について立場を明らかにしていないが、今や激戦州となったアリゾナ州の動きに今後も注目が集まる。

(注1)ジョージア州の上院選では、1回目の投票でどの候補者も州法が定める得票率に届かなかったため、12月6日に決選投票を行い、現職の民主党ラファエル・ワーノック議員が勝利した(2022年12月7日記事参照)。

(注2)シネマ議員は現在、銀行・住宅・都市問題委員会、商業・科学・運輸委員会、国土安全・政府問題委員会、退役軍人問題委員会に所属している。

(磯部真一)

(米国)

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