2021年の中南米直接投資受入額は前年比40.7%増も、新型コロナ禍前の水準には戻らず

(チリ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、コロンビア、メキシコ、中南米)

サンティアゴ発

2022年12月26日

国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)によると(11月29日発表)、2021年の中南米地域の外国直接投資(FDI)受入額は、前年比40.7%増の1,427億9,400万ドルだった。一方で、新型コロナウイルス流行前の水準に戻るほど十分な投資ではなかったとし、ECLACは持続可能で包括的な開発投資を戦略的に活用するよう域内の国々に呼びかけた。

2021年の世界全体のFDI受入額は前年比64%増の1兆6,000億ドルで、うち中南米地域へのFDIの割合はわずか9%となっている。これは中南米の受入額が全体の14%を占めていた2013年や2014年に遠く及ばず、過去10年で比較しても2021年は世界シェアの最も低い年の1つとなった。

2021年のFDI受入額を国別にみると、トップ5はブラジル(構成比:32.5%)、メキシコ(23.4%)、チリ(10.7%)、コロンビア(6.8%)、ペルー(5.2%)の順だった(添付資料表1参照)。ブラジル、コロンビア、アルゼンチンのFDI受入額は新型コロナ流行前の水準まで回復しなかったものの、チリとペルーは2015年来となる高い受入額になった。中米ではコスタリカが2年連続でFDI受入額が多い国として位置づけられており、また電気通信分野における大規模投資が行われたことによりグアテマラが前年比で大幅増となった。

中南米14カ国(注1)のFDI受入額を分野別にみると、前年比で最も増加したのは天然資源(62%増)への投資で、これは主にメキシコの金属採掘分野への投資が増加したことが影響している。サービスへの投資は39%増で、主にブラジルの金融サービス、商業、電気、ガス、情報技術サービスへの投資が増加した。一方で、製造業は比重の大きいブラジルにおける石油および石炭製品分野への投資減が響き、14%減となった。

中南米11カ国(注2)が受け入れた直接投資国は、欧州各国と米国でFDI受入額全体の70%を占めている。米国のセンプラ・エナジーは、メキシコ最大の民間エネルギー企業インフラエストゥルクトゥラ・エネルへティカ・ノバ(IEnova)へ新たに17億6,800万ドルで同企業の株式23.26%を取得し、出資比率を96.4%に引き上げた(添付資料表2参照)。他にも域内最大のM&A案件としては、中国の国家電網がチリの電力大手CGEの株式100%を30億2,500万ドルで買収した案件などがあり、2021年はインフラ関連の大規模な投資が活発に行われた。

ECLACは、世界および域内の経済成長の悪化、インフレの加速、ロシアのウクライナ侵攻などの要因により、2022年の中南米地域のFDIの見通しを推定することは非常に困難だとし、予想値の発表を避けている。

(注1)分野別のデータを公表している、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ガイアナ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ドミニカ共和国の14カ国。

(注2)ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ドミニカ共和国の11カ国。

(岡戸美澪)

(チリ、ブラジル、アルゼンチン、ペルー、コロンビア、メキシコ、中南米)

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