社会科学院、2023年の経済成長率を5.1%前後と予測

(中国)

北京発

2022年12月26日

中国社会科学院は1213日に「経済青書」を発表し、2023年の中国の実質GDP成長率について、5.1%前後になるとの見通しを示した。世界の経済成長の鈍化により輸出に対する下押し圧力が増す一方、新型コロナウイルス防疫対策の最適化に伴って国内消費が大幅に押し上げられると見込まれること、また比較対象となる2022年の数値が低いことなどを踏まえ、2023年の中国経済は顕著な回復の勢いを示し、全体として好転すると予測した。

青書では、2023年の経済運営について、積極的な財政政策と穏健な金融政策を継続するよう建議した。積極的な財政政策はより効果的なものとし、2023年は財政赤字をGDP比で3%前後(注)とし、専項債(地方特別債)の適用範囲を適度に拡大することも提起した。金融政策については、実体経済に対する融資総額の安定的成長を維持しつつ、構造転換・弱点の補強を中心に金融政策ツールを活用するよう提案している。

また、2023年の重点取り組みとして、消費と民間投資の拡大に注力すること、不動産市場においてリスクの解消とともに長期的に有効なメカニズムを構築することにより安定的発展を促進すること、科学技術イノベーション体系の整備を加速すること、産業・サプライチェーンをいっそう強靭(きょうじん)化することなどに取り組むべきとしている。

同青書の発表会で基調講演を行った社会科学院元副院長の蔡昉氏は、2023年の中国経済は新常態となる可能性があるとしている。短期的に受けた影響が今後の経済成長にも一部持ち越される可能性があるほか、総人口がピークに達した後、生産年齢人口の減少ペースが加速し、労働力、人的資本、資本リターン率、生産性などへの影響がさらに高まる可能性があるとコメントした(「21世紀経済報道」1213日)。

全国政治協商会議経済委員会の劉世錦副主任は、過去3年間の平均経済成長率は5%より低く、潜在成長率の55.5%を下回っており、中国経済の中長期的成長に不利だと指摘し、2023年に新型コロナウイルスの影響から基本的に脱却することができたとしても、中国経済が正常な成長レンジに戻ることができるかについては引き続き注視する必要があるとした(同)。

(注)2022年は、持続可能な財政を維持するため、積極的な財政政策の効果を向上させる必要があるとし、財政赤字のGDP比の目標を2021年から0.4ポイント引き下げ2.8%前後に設定した。

(張敏)

(中国)

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