ウルグアイ、中国とのFTA交渉開始日を協議、産業界は工業製品輸入増を懸念

(ウルグアイ、中国、メルコスール)

米州課

2022年11月10日

ウルグアイ・カトリカ大学のニコラス・アルベルトーニ教授は10月28日、ウルグアイと中国が正式に自由貿易協定(FTA)交渉を開始するべく、現在、交渉開始日を協議していることを明らかにした(10月28日付インターアメリカンダイアログの広報媒体「ザ・ダイアログ」)。同国のルイス・ラカジェ・ポウ大統領は7月13日、2国間FTAに関する予備調査が完了したことを明らかにしている(2022年7月15日記事参照)。

このFTAの影響について、ウルグアイ工業会議所は2021年12月、「中国・ウルグアイ協定の可能性を踏まえた国内製造業への影響可能性」と題したレポートを公開PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)している(注1)。それによると、FTA発効により、ウルグアイの主要輸出品の牛肉や乳製品、ウール、革関連品と言った品目の中国向け輸出増が期待される。他方で、中国からの安価な工業製品輸入増により、国内製造業への影響が懸念される。具体的に影響を受ける分野として、「靴、繊維および洋服、食品、木材、化学品、トイレットペーパーおよびタオル、書籍などの印刷関連製品、プラスチック製品、鉄鋼および冶金(やきん)関連品、自動車部品、機械部品、ガラス製品」などが挙げられている。

ウルグアイにとって中国は輸出相手国の第1位、輸入相手でも第2位だ(注2)。同レポートによると、FTA発効により、中国向け輸出で現在最も金額の大きいHSコード0202.30の「冷凍牛肉(骨付きでない肉)」の輸出がさらに増加するだけでなく、例えば、HSコード0205.00に分類される「馬の肉(生鮮、冷蔵、冷凍したもの)」といった、現在は輸入時に中国側で関税が賦課されている品目(注3)についても、関税削減や撤廃により価格競争力が増す。後者については、ウルグアイから中国向けの年間輸出額(注4)は2,400万ドルに対し、中国側の需要が4,800万ドルと大きいことから、FTA発効によるさらなる輸出拡大への期待が大きい。その他、HSコード0402.10や0402.21に分類される「ミルクおよびクリーム」(注5)についても、中国側では有税品目のため、協定発効によるさらなる輸出増加に期待がかかる。

一方、中国からの輸入については、HSコード6桁ベースで458品目への影響が懸念されている。それらは上述のとおり、消費財、中間財など多岐にわたり、幅広い国内産業が影響を受けるとみられる。自動車関連産業への影響について、具体的には、蓄電池(HSコード8507.10および8507.20)、乗用車用タイヤ、スイッチ(同8535.90および8536.49)、安全エアバッグ(同8708.95)、ブレーキ・同部品(同8708.30)などについて、中国からの輸入が一定金額あることから、協定発効により中国からの輸入増が見込まれる。

(注1)調査は、2018~2020年の2国間の貿易実績を基に作成。

(注2)2021年時点。出所はウルグアイXXI。ウルグアイ概況PDFファイル(0.0B)参照。

(注3)MFN税率は20%

(注4)2018~2020年の貿易実績を基に算出

(注5)MFN税率は10%

(辻本希世)

(ウルグアイ、中国、メルコスール)

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