米テキサス州で、テック系次世代技術の祭典「オースティン・スタートアップ・ウイーク」開催

(米国)

ヒューストン発

2022年11月30日

スタートアップやベンチャーキャピタル(VC)や起業家、投資家などが一堂に会するスタートアップイベント「オースティン・スタートアップ・ウイーク2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が111418日、米国テキサス州オースティンで開催された。2011年から毎年開催されているこのイベントは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年はオンライン開催、2021年はオンラインと対面型のハイブリッド開催だったため、3年ぶりの完全対面型の開催となった。

会期中には、人工知能(AI)やブロックチェーン、非代替性トークン(NFT、注1)、WEB3.0(注2)などの分野や、資金調達、企業内マネジメント、マーケティング手法などスタートアップが直面する課題に焦点を当てた講演やパネルディスカッション、ネットワーキングなどが行われた。14日の「テック産業で活躍する女性起業家サミット」のセッションでは、オースティンを拠点とする女性起業家5人によるピッチが行われたほか、フェムテック(注3)や性的少数派の人々(LGBTプラス)など社会課題の解決を目指す議論が行われた。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

オースティンはテキサス大学が運営する産学連携組織IC2(アイシースクエア)を核としてエコシステムが整備され、「シリコンヒルズ」とも呼ばれるハイテク産業の集積地の1つだ。イベントに参加したオースティンを拠点にするテック関連のスタートアップの創業者は「オースティンの強みは、シリコンバレーと比べてコミュニティーが小さいところにある」と述べ、具体的には、小さいコミュニティーの中で、起業家同士が積極的な情報交換を行ったり、投資家やキーパーソンを紹介し合ったりするなど、助け合う文化が根付いていると説明した。同氏はそのほかにも、テキサス州は法人所得税と個人所得税がないことや(注4)、米国の東西海岸にある大都市と比較して生活費が安価なことも、オースティンで創業するメリットとして強調した。

イベントを主催したキャピタルファクトリー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、オースティンにあるインキュベーター兼アクセラレーターだ。同社は200人以上のメンターを抱えてスタートアップのスケールに向けた支援を提供するほか、一部の有望スタートアップには自ら投資も行う。同社が運営するコワーキング施設には、アマゾンやマイクロソフトなどの大手テック企業が入居しているほか、米国陸軍装備の現代化に資する新たな技術の探索を手がける米陸軍未来司令部(AFC)などが入居しており、同施設を利用するスタートアップは自社技術や製品の売り込みに向け関係を築きやすい環境が整っている。

写真 キャピタルファクトリーが運営するコワーキング施設内のアマゾンウェブサービスオフィス(ジェトロ撮影)

キャピタルファクトリーが運営するコワーキング施設内のアマゾンウェブサービスオフィス(ジェトロ撮影)

写真 コワーキング施設の様子(ジェトロ撮影)

コワーキング施設の様子(ジェトロ撮影)

(注1)ブロックチェーン(分散型台帳技術)上で取引・発行される、偽造不可な唯一無二の鑑定書・所有証明書付きデジタルデータ。

(注2)一般に、電子メールとウェブサイトを中心とした一方向的な情報伝達が行われた「WEB1.0」、いわゆる「GAFAM」など大手テック企業が市場を席巻し、スマートフォンとSNSに特徴付けられる双方向的な情報発信が行われる「WEB2.0」に続く、分散型ブロックチェーン技術やトークンベース経済を用いた分散型ガバナンスによる次世代のインターネット社会の概念。

(注3)「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語。女性が直面する健康課題をテクノロジーで解決することを目的とする。

(注4)テキサス州における各種税制については、ジェトロの調査レポートを参照。

(平澤友華

(米国)

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