蓄電池でディーゼル燃料をゼロに、シンガポールのビーフローテック

(シンガポール)

シンガポール発

2022年11月28日

2018年創業のVFlowTech(ビーフローテック)は、蓄電池(パナジウム・レッドクス・フロー電池)を開発するシンガポールのスタートアップだ。送電網のない離島や遠隔地向け、電気自動車(EV)などに蓄電池ソリューションを提供する。アビシェック・クマール(Abshek Kumar)創業者兼最高経営責任者(CEO)に1020日にインタビューした。

写真 アビシェック・クマール創業者兼CEO(VFlowTech提供)

アビシェック・クマール創業者兼CEO(VFlowTech提供)

(問)起業に至る経緯は。

(答)シンガポール国立大学(NUS)博士課程を修了後、太陽光パネル製造会社RECを経て、コンサルタント会社を立ち上げた。しかし、コンサルタントとしてアジア各地で太陽光発電の導入に関わったが、発電が一定ではない太陽光には、蓄電の技術が必要だ。(起業家を養成する)アントレナーファースト(EF)を通じて、南洋工科大学(NTU)で蓄電池を研究していたもう1人の共同創業者のアルジュン・バタリ氏と知り合い、ビーフローテックを立ち上げた。

(問)日本への進出について。

(答)われわれの蓄電池の最初の納入先は日本だ。専門商社の篠田株式会社(本社:岐阜県羽島郡岐南町)が自社ビル用に導入した。日本は独自の仕様を持つ異なる市場で、日本での製造も検討している。なぜなら、高度な人材が採用できるほか、コストもコントロールできるからだ。ただ、そのためには投資額が多額になることから、パートナーを求めている。

(問)アフリカへの進出について

(答)われわれの投資家でもある地場原油取引会社シング・フューエル(Sing Fuels)はもともと、アフリカ市場に事業基盤があった。アフリカではエネルギーの供給が一定ではないところも多く、クリーンエネルギーを供給する機会は多い。シング・フューエルとの合弁会社は、アフリカでマイクログリッドを設置・運営し、クリーンエネルギーの販売を目指している。蓄電池は高額のため、アフリカでは直接販売が難しい。しかし、マイクログリッドの設置を通じて蓄電池も収めるという新しいビジネスモデルを構築できるかもしれない。

(問)将来のビジョンについて。

(答)東南アジア、そして日本でも多くの人が現在、ディーゼル燃料を使用している。太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、ディーゼル燃料を99%削減できると信じている。向こう5年で、東南アジアでディーゼル燃料をゼロ(ディーゼルフリー)に貢献したい。インドネシアやフィリピン、モルジブなどの離島では、発電燃料としてディーゼルに依存しているが、そのディーゼルを人々の生活から完全になくしたいと願っている。

(ジェトロ・シンガポール事務所)

(シンガポール)

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