フランス政府、COP27の成果に失望の意を表明

(フランス)

パリ発

2022年11月28日

フランス政府は11月20日、エジプトで行われた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の合意内容について、途上国に対する気候変動がもたらす「損失と損害」問題の対応における「前進」を歓迎しつつ、気候変動危機を乗り越える野心の欠如を遺憾とする声明文を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

アニエス・パニエ=リュナシェ・エネルギー移行相は同声明文で、「COP27の合意はフランスおよび欧州(EU)が望んだ野心的なものではなかった。特に温室効果ガス排出量削減への一層の努力の必要性および化石燃料からの脱却について進展がみられなかった」「より前進しようというわれわれの声は受け入れられなかった」と失望の意を表明した。

EUは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の提言を踏まえ、気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標を達成するため、2025年までに温室効果ガス排出量がピークを過ぎる必要があると訴えたが、合意を得るに至らなかった。

フランス政府は、損失と損害に特化した途上国向けの基金創設については、気候変動の被害を受けやすい途上国の期待に応えるものだと評価すると同時に、フランスは基金創設にとどまらず、損失と損害に係る資金支援メカニズムの抜本的な見直しに取り組むことを約束した。

具体的には、2022年6月のドイツG7サミットでの合意を受けて11月14日に発足した気候変動損失・損害対策イニシアチブ「グローバル・シールド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注)に2023年に2,000万ユーロの資金を供与する。これによりドイツ、カナダ、デンマーク、米国と合わせた支援総額は2億1,000万ユーロとなる(フランス政府の11月14日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、気候変動の被害を受けやすい開発途上国のプロジェクトへ資金を提供する京都議定書に基づく基金「適応基金(AF)」に、2022~2023年に1,000万ユーロを追加供与する意向を明らかにした。

環境保護団体グリーンピース・フランスは11月20日に発表したコミュニケ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、COP27は化石燃料に関して、2021年のCOP26グラスゴー気候合意から「少しも進歩させることができなかった」と指摘しつつ、気候変動の影響に脆弱(ぜいじゃく)な国が被る損失と損害に対する資金援助に特化した初の基金の創設について合意に達したと評価した。

なお、フランス政府はCOP27で発足したイニシアチブのうち、(1)国連食糧農業機関(FAO)の「持続的変革のための食料・農業イニシアチブ(FAST)」(2022年11月22日記事参照)、(2)気候変動が都市に与える影響を軽減し、レジリエンスを強化する「次世代のための持続的な都市の強靭(きょうじん)性(SURGe)」、(3)持続可能開発に気候変動への対応を組み入れる「平和維持に向けた気候対応(CRSP)」、(4)「自然を基盤とした強化された気候変動解決策(ENACT)」の4つのイニシアチブへの参加を決めた。

(注)フランス政府によると、同イニシアチブは、気候変動による災害発生時に迅速で信頼性の高い資金調達を提供するため、保険ソリューションなどの設計と展開を支援する。

(山崎あき)

(フランス)

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