米半導体大手マイクロン、広島県東広島市の生産拠点で次世代半導体の量産開始

(米国、日本、中国、広島、熊本、三重)

米州課

2022年11月18日

米国の半導体大手マイクロンテクノロジーは11月16日、広島県東広島市の同社生産拠点で、先端半導体の量産開始の記念式典を開催した。サンジェイ・メロートラ同社社長兼最高経営責任者(CEO)や、湯﨑英彦広島県知事、ラーム・エマニュエル駐日米国大使、野原諭・経済産業省商務情報政策局長らが参加した。

同社によると、東広島市の同社生産拠点で量産を開始したのは「1β(1ベータ)」世代のDRAMと呼ばれる次世代の先端半導体メモリだ。人工知能(AI)や第5世代移動通信システム(5G)といった高度な情報通信技術には高性能な半導体が欠かせない。半導体の高性能化には、その高密度化や微細化が重要な要素となっていることから、DRAMメーカーは1ナノメートル(nm)単位での高密度化や微細化にしのぎを削っている。一般に、配線間寸法が最短19nm以下のDRAMは「1x」「1y」「1z」世代と呼ばれるが、アルファベットで最後のZまで到達したことから、さらに高密度化や微細化が進んだ次世代のDRAMはギリシャ文字をとって「1α(1アルファ)」「1β(1ベータ)」世代とも呼ばれている。

メロートラCEOは式典で「世界最先端のDRAM技術である1β(1ベータ)を広島で開発できたことをうれしく思うとともに、量産開始に期待している。日本政府、特に経済産業省から長年にわたり技術や業務遂行の向上に対する支援に感謝している。マイクロンの顧客や、大手装置・材料メーカー、大学研究機関、そのほかの業界関係者を含む日本の半導体エコシステム全体とのパートナーシップを継続し、業界を先導するマイクロンのメモリー技術への投資が全ての人に利益をもたらすようにしたい」と述べた。また、エマニュエル大使は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「日米は過去3年間、互いの国への直接投資額で首位の座を占めてきた。われわれは連携し、未来への投資を進めており、4年連続でこの座を占める道を順調に歩んでいる。互いの国や経済にこのような投資をすることは、日米両国、そして世界をリードする日米ハイテク業界にとっても有益だ」と述べるとともに、自身のツイッターを更新し、「日米両国が半導体サプライチェーンと国家安全保障の強化にともに取り組む好例だ」と意義を強調した。

米国では、デジタル化や新型コロナウイルス禍からの経済回復の下で高まる半導体需要やサプライチェーン強靭(きょうじん)化の観点から、米国内の半導体生産能力強化やサプライチェーン再構築の動きが加速化しており、バイデン米政権は2022年8月に国内半導体生産体制強化に向けて産業界に資金援助を行う「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法を成立させた(2022年8月10日記事参照)。また一方で、米商務省は10月に、中国を念頭に、先端半導体や製造装置、スーパーコンピュータなど半導体関連製品の技術流出が米国の安全保障と外交的利益にマイナスの影響を与えるとして、輸出管理規則(EAR)を強化する暫定最終規則を発表している(2022年10月11日記事参照)。

日本でも、経済産業省が国内主要産業への半導体安定供給などを目的に特定の半導体生産施設に対する施設整備費用の一部助成を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、これまでに(1)2022年6月17日に台湾積体電路製造(TSMC)などの熊本県の生産拠点(投資額86億ドル規模)に最大4,760億円、(2)7月26日にキオクシアなどの三重県の生産拠点(投資額約2,788億円)に最大929億円、(3)9月30日に今回のマイクロンの広島県の生産拠点(投資額約1,394億円)に最大465億円の助成を明らかにしている。

(葛西泰介)

(米国、日本、中国、広島、熊本、三重)

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