インド政府、COP27での「損失と損害」基金設立の歓迎表明

(インド)

ニューデリー発

2022年11月25日

インドのブペンドラ・ヤダブ環境・森林・気候変動相は11月20日、エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の閉会式において、気候変動による被害を各国が協調して補償する「損失と損害」基金創設は、世界が待ち望んでいた歴史的な合意だと評価した。また、先進国が国際的な気候変動対策を主導する重要性を指摘する一方、途上国には脱炭素だけでなく低炭素も含めたエネルギー源の選択権が必要と述べた。他方、インドは会期中、全ての化石燃料の使用の段階的な削減を主張したが、この点は最終合意に盛り込まれなかった。

インドの主要メディアは、今回の最終合意に対するさまざまな見方を報じている。「クイント」紙(11月21日)は、この基金のメカニズムに関してはまだ不明な点が多いとしながらも、政策研究センター(CPR)のナブローズ・デュバッシュ教授が「損失と損害基金の創設によって、各国が倫理的観点から気候変動を論じる際、今後はこの枠組みに言及せざるを得なくなる」と述べ、前向きな見解を示したことを紹介した。一方、「ビジネス・ライン」紙(11月21日)は社説において、この基金においてインドが直接の受益国になることは考えにくいとした上で、インドが中国、米国、EUに次ぐ二酸化炭素(CO2)排出国である点を踏まえると、むしろ基金に拠出するよう今後働き掛けられる可能性もあるとして、警戒感をにじませている。

また、最終合意において、化石燃料の使用に対する段階的な削減への言及がなされなかった点に関し、「ビジネス・スタンダード」紙(11月20日)は社説において、湾岸諸国やロシアなどの産油国による強い反対によってインドの主張が通らなかったとしつつ、EUを含む一定数の国がインドの主張に賛同したことは評価できると論じた。同様に、国際NGOであるアクションエイド協会インド支部のサンディープ・チャクラ氏も、COP27でこの点での成果が得られなかったことは残念としつつ、「COP27でインドがその提案をしたことは重要な出発点となった」としている(PTI通信11月21日)。

(広木拓)

(インド)

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