欧州委、公的サービスのデジタル化で加盟国間の相互運用性を強化する協力枠組み規則案発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年11月25日

欧州委員会は11月21日、EU加盟国当局間の国境を越えたデータのやりとりの円滑化などを目的に、公的サービスのデジタルソリューションの相互運用性を強化する協力枠組みを設定する規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委はEUの社会全体のデジタル化への移行を最優先課題の1つに掲げており、2030年までのデジタル化目標(2021年3月12日記事参照)でも、公的サービスのデジタル化を主軸の1つに挙げている。こうした目標の下、各加盟国は公的サービスのデジタル化を推進しているが、現状では加盟国間の相互運用性が不十分なことが課題となっている。EUでは既に、加盟国共通の協力枠組みとして欧州相互運用性枠組み(EIF)を設定しているものの、各加盟国の自主的な取り組みに依存していることから、加盟国間の公的サービス相互運用性の改善は十分に進んでいない。

そこで、規則案は、デジタル規格などの技術仕様のほか、指針や運用方法など、公的サービス向けの相互運用性を持ったソリューション(オープン・ソース・ソフトウエア、ガイドライン、ITツールなど)を、各加盟国とEU機関が共同で開発する新たな協力枠組みとして規定する。ただし、規則案は、各加盟国が相互運用性を確保するためのインセンティブを含む一方で、全加盟国に対して一律に適用する相互運用性の規格や最低要求事項などを規定するものではない。

新たな協力枠組みの中心となるのが欧州相互運用性会議(IEB)の設置だ。規則案によると、IEBは加盟国のほか、EUからは欧州委に加えて、加盟国の地方政府を代表する諮問機関の地域委員会などの代表者からなる。IEBはEIFを公的サービスのデジタルソリューションの相互運用性に関する共通評価基準にすべく改定するとともに、公的サービス向けの相互運用性ソリューションに関して合意形成を図る。また、IEBは相互運用性を確保する観点から、加盟国の公的機関などによるEUのデジタル化政策の実施に向けた支援措置や、革新的な相互運用性ソリューションの開発や導入など技術革新を支援するための措置などを欧州委に提案することができる。幅広い分野の意見を反映させるために、官民の利害関係者が参加する諮問機関も設置する。

また、規則案は、加盟国が公的サービスでネットワークや情報システムを新設、あるいは大幅修正する場合には、加盟国間の相互運用性に関する影響評価を実施することを義務付ける。このほかに、EU域内の公的機関が独自のソリューションを採用した場合には、域内の他の公的機関の要請に応じて、同ソリューションの共有と再利用を原則として認めることも義務付ける。

(吉沼啓介)

(EU)

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