全てのがんの早期診断目指す、シンガポールのバイオテック企業MiRXES

(シンガポール)

シンガポール発

2022年11月29日

2014年に創業のMiRXES(ミレクシス)は、血液中に含まれるマイクロRNAをバイオマーカ―(生物学的指標)として、胃がんなどがんの早期診断の検査キットを開発するシンガポールに本社を置くバイオテクノロジー企業だ。20201月には日本法人を立ち上げ、日本の病院や研究機関とも共同研究に取り組む。自らを「偶然の起業家」と呼ぶジョウ・リーハン(Zhou Lihan)創業者兼最高経営責任者(CEO)にインタビューした(インタビュー日:2022112日)。

写真 ジョウ・リーハン創業者兼CEO(ミレクシス提供)

ジョウ・リーハン創業者兼CEO(ミレクシス提供)

(問)起業のきっかけは。

(答)私はもともと、科学技術研究庁(Aスター)に所属していた科学者だった。血液中のマイクロRNAを用いて何ができるかという問いが起業の道のりの始まりだった。研究を通じて、マイクロRNAを用いて効率的にがんの早期診断に用いることができることがわかった。診断の遅れによる処置の遅れや、治療費の高額化、致死率の上昇という現状を早期診断によって変えられると思った。最初に早期診断の開発対象としたのは胃がんだ。日本は胃がん検査を実施した最初の国だ。しかし、日本以外の他の国々の多くは、日本のように内視鏡検査を全国で展開するインフラがない。血液検査によって胃がんの早期診断が可能という暫定的なデータを手に、2014年にAスターからスピンオフした。

(問)資金調達について。

(答)2018年にシリーズB4,000万ドルを調達し、その後、シリーズC8,700万ドルを調達した際には、米国やシンガポールのほか、香港、中国などの投資家から資金を調達した。これらマーケットは全て私たちが進出したいと計画する市場だ。今後、日本での事業拡大を計画しており、日本のベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)ファンドからの資金調達を積極的に検討している。

(問)日本との共同研究を通じて目指すことは。

(答)シンガポールは日本と比べると、がん検診や早期診断で遅れていることは確かだ。シンガポールが分子技術(molecular technology)を用いて、いかに日本にキャッチアップできるか、そして、日本が分子技術を活用することで、さらにその医療技術の発展に貢献したい。全ての国で全てのがんを早期診断できるようにするのが理想だ。もちろん、課題はあると思うが、転換点にきていると思う。

(問)将来のビジョンについて。

(答)第1に、マイクロRNAの分野で世界1位になりたい。第2に、東南アジアではゲノム・プラットフォームを構築したい。集団ゲノミクスを用いて、必要と思われる人たちを絞り込み、血液検査でがんの早期診断を可能にして、適正な治療体制を構築したい。一方で、日本や米国、中国など成熟した主要マーケットでは、マイクロRNAによる早期診断でトップの地位を獲得したい。

(ジェトロ・シンガポール事務所)

(シンガポール)

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