2023年度予算に関して大統領など有識者が議論

(スリランカ)

コロンボ発

2022年11月30日

スリランカで1118日、Daily FTとコロンボ大学MBA同窓会が「ポスト・バジェット・2023 フォーラム(Post-Budget 2023 Forum)」を開催し、政府や国際機関などの専門家が2023年度(暦年と同じ)予算案(2022年11月21日記事参照)について議論を交わした。

ラニル・ウィクラマシンハ大統領は予算案の狙いとして、国有企業の売却やこれまで優遇対象だった輸出企業への課税を通じて税収拡大を図る一方で、経済成長を促進していくと明らかにした。産業活性化の計画としては、国際物流の発展や農産物の輸出拡大、富裕層向けのクルーズ船やホテル開発による観光の促進、製造業での自動化推進、再生可能エネルギーの利用拡大、インドや中国、タイとの自由貿易協定(FTA)交渉の再開、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)協定への将来的な参加などを掲げた。

特に物流面では、港湾の開発により「スリランカを国際物流の中心に発展させる」と強調した。日本とインドが開発予定だったコロンボ港東コンテナターミナルを完成させるとともに、北部のカンケサントライ港を拡張していくことで、南西アジア諸国や中東、アフリカとの結びつきが強まるという。また、南部のハンバントタ港については、中国による「一帯一路」構想が実現すれば、アフリカなどに中国企業が建設した港と接続できると語った。東部のトリンコマリー港については、インドとの連携によりベンガル湾とつながると指摘した。

この予算案について、有識者の多くが方向性に理解を示した一方で、実行性については疑問も投げかけた。アジア開発銀行(ADB)カントリーディレクターのチェン・チェン氏は、経済安定化や財政持続化に向けた措置や国有企業改革を評価した一方で、国民の支持や施策の実行、社会全体の包括的保護を求めた。世界銀行スリランカ・モルディブ・ネパール・南アジアカントリーディレクターのファリス・ハダド・ゼルボス氏は、経済危機を通じて貧困水準が上昇しており、スリランカ政府は社会的弱者に配慮する必要があると強調した。セイロン商工会議所会長のビッシュ・ゴビンダサミー氏は、社会全体として経済的弱者の水準を上げ続けることで、貧困層の数を減らす必要があると指摘した。

そのほか、スリランカ政策科学研究院エグゼクティブディレクターのドゥシュニ・ウィーラコーン氏は、大統領選挙が予定されている20249月までに実行可能な施策を厳選して実行すべきだと指摘した。ランカタイルズマネジングディレクターのマヘンドラ・ジャヤセカラ氏は、現在の経済危機の原因を特定し、問題に対処することが重要だと語った。

写真 有識者ともに議論を交わすウィクラマシンハ大統領(ジェトロ撮影)

有識者ともに議論を交わすウィクラマシンハ大統領(ジェトロ撮影)

(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)

(スリランカ)

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