スリランカ、2023年度予算案を発表

(スリランカ)

コロンボ発

2022年11月21日

スリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領は11月14日、国会で2023年度(暦年と同じ)予算案を発表した。大統領は「現在進行中の経済危機を克服するには、スリランカがどこで失敗し、どこで過ちを犯したかを見定めることが重要だ」と強調した。併せて、従来の政府が大衆の支持を求めて減税など過度に社会福祉政策に重点を置いてきたと批判した。

その上で、社会的な保護の下で民間起業家や若者が活躍する新たな「社会的市場経済(social market economy)」を構築すると主張し、下記の目標を掲げた。

  • 7〜8%の高い経済成長率
  • GDPに占める国際貿易の割合を100%以上に増加させる
  • 2023年から2032年にかけて、新たな輸出を年間30億ドルずつ増加させる
  • 今後10年間で30億ドル以上の海外直接投資の誘致
  • 今後10年間で国際的な競争力のある、高い技術力を持つ労働力の創出

こうした目標の下で予算を編成した(添付資料表参照)。主な予算案の内容は、次のとおり。

【新たな投資促進機関と経済特区】

  • 投資委員会(BOI)、輸出促進庁(EDB)、輸出信用保険公社(SLECIC)、国家企業開発庁(NEDA)などに代わり、新たな法律の制定を通じ、貿易・投資のための1つの機関を設立する。
  • 外国投資を呼び込むため、西部州、北西部州、南部州ハンバントタ、東部州トリンコマリーに新しい経済特区を導入する。

【グローバル市場へのアクセス向上】

  • インドや中国などの主要市場との統合に向けた取り組みのほか、タイとの貿易交渉やシンガポールとの自由貿易協定(FTA)の交渉を再開している。これにより、スリランカは地域的な包括的経済連携(RCEP)協定のようなダイナミックな地域の貿易枠組みへの足掛かりを築くことができる。
  • 国際貿易交渉を担う「国際貿易局」を財務省に設立し、のちに外務省と合併する。外務省は、「外務国際貿易省」と改称する。

【付加価値税の拡大、準関税措置の廃止】

  • 税収の拡大に向けて、2002年から2022年までの改正内容を統合した新たな付加価値税(VAT)法を制定する。また、電気、輸送、燃料部門などに認められているVATの一部の免除を廃止する。
  • 製造業の振興や国際貿易の障壁除去を目的として、輸出入税(CESS)を2023年から3年間で、港湾・空港開発税(PAL)を5年間で段階的に廃止する。
  • 2023年1月1日から適用する関税・課徴金の案に対応するため、輸入時の関税率を現行の0%、10%、15%から0%、15%、20%に改定する。

【国有企業の再編】

  • スリランカ航空やスリランカ・テレコムなど国有企業の再編を通じ、外貨準備高を増やす。

【太陽光エネルギー・電気自動車】

  • 再生可能エネルギーによる電気の生産やソーラーパネルの国内生産を促進するため、2023年1月1日からPALと社会保障賦課金(SSCL)を免除する。
  • 電気自動車の利用と組み立てを促進するため、必要なインセンティブを提供する。自動車を組み立て、少なくとも25%の付加価値をつけるとともに、必要な部品を現地で生産する組織に限りSSCLを免除する。

(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)

(スリランカ)

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