欧州宇宙市場ではスタートアップ企業との協業も視野に

(欧州)

海外市場開拓課

2022年11月02日

ジェトロは1025日に、202212月~20231月実施予定の「欧州・オンライン商談会(宇宙分野)」に向けてオンライン事前説明会を開催した。説明会では、宇宙産業に長年携わってきた葛岡成樹氏(サテライト・ビジネス・ネットワーク代表取締役社長)より、世界と欧州の宇宙産業・企業動向と商談会準備などに関する説明が行われた。以下、葛岡氏の講演の概要を紹介する。

宇宙ビジネスでの過半を占める衛星サービス

葛岡氏によると、世界の商用宇宙ビジネスの規模は毎年伸長し、2021年は約50兆円に達しており、その過半は通信、衛星放送などを扱う衛星サービス分野である。日本企業の関わりが大きい衛星製造は全体の7%程度にとどまっており、葛岡氏は「宇宙ビジネスでは、どの分野がメインストリームなのか把握することが重要」と強調した。次に商用宇宙ビジネスにおける2大潮流衛星通信(SatCom)」と「地球観測(EO)衛星」に触れ、前者では企業がブロードバンドへどこまで関われるかを、後者では需要の大半が防衛・安全保障関係であることを、ぞれぞれ認識しておく必要があるとの言及があった。

世界情勢が影響する宇宙ビジネス

世界の宇宙ビジネスの規模を政府需要から概観していくと、米国に次いで伸びているのが中国を筆頭としたアジア諸国であり、欧州、ロシアがこれに続くと葛岡氏は説明した。

他方、欧州では、フランスがロシアの宇宙船ソユーズに衛星を搭載し打ち上げることでロシアに依存してきたなど、宇宙産業でのロシアとのつながりは意外に大きいとした。ウクライナ侵攻によりこうした関係が途絶え、欧州各国では国家予算を増強し、宇宙産業の自立化を図る動きがあるとのことだ。

次のステップを明確に、スタートアップ企業との連携も視野へ

欧州では各国で独自の宇宙産業育成策を取っている。葛岡氏によると、政府主導でプロジェクトが進められることは日本と類似しているが、新規参入のスタートアップ企業(“New Space”)への支援策も手厚いところが特色だ。日本企業にとっては、既存の宇宙産業関連企業(“Old Space”)のみならず、New Spaceとの協業を図ることも検討の余地があるとの見解を示した。最後に葛岡氏は、商談に当たってのポイントとして、産業・市場特性の分析などにとどまらず、その次のビジネス化に向けた具体的なアクションを日本企業側から呼びかけていく事が肝要と述べた。

写真 事前説明会で講演する葛岡氏と説明資料(講師より許可を得て掲載)

事前説明会で講演する葛岡氏と説明資料(講師より許可を得て掲載)

(桑原繁)

(欧州)

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