バイデン米政権、請負業者にGHG排出量などの開示を義務付ける規則案発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月16日

米国バイデン政権は11月10日、温室効果ガス(GHG)排出量と気候関連財務リスクに関するデータの開示と、科学的根拠に基づく排出量削減目標の設定を連邦政府の主要な請負業者に義務付ける規則案を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の規則案は、2050年までに連邦政府の調達においてカーボンニュートラルを目指すという、2021年12月に出された大統領令を受けたもの。この規則案では、連邦政府のサプライチェーンに関連するGHG排出量の約85%が対象となり、これは連邦政府の30万棟の建物と60万台の車両の使用によって生じるGHG排出量の2倍以上に相当すると推定している。

ホワイトハウスによれば、連邦政府の2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の調達額は6,300億ドルを超える。規則案はこうした連邦政府と契約している請負業者が対象となる。具体的には、年間契約額750万ドル以上の業者には、スコープ1(事業者自らによるGHGの直接排出)およびスコープ2(他社から供給された電気などの使用に伴う間接排出)の排出量の報告を義務付ける。年間契約額5,000万ドル以上の業者には、これに加えてスコープ3(事業者の活動に関連するサプライチェーン上の他社からの排出)の排出量および気候関連の財務リスクを公開するよう義務付けるとともに、科学的根拠に基づく排出量削減目標の設定も求める。なお、年間契約額750万ドル未満の請負業者は義務付けが免除されている。規則案は2023年1月13日までパブリックコメントが募集される。

ジョー・バイデン大統領は11月11日、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)での登壇時にこの規制案に言及し「昨日、米国(連邦政府は)は、排出量と気候リスクの開示というパリ協定に準じた目標の設定を政府の主要請負業者に対して義務付けた、初めての政府となった」として、今回発表した規則案を各国にアピールした。

11月14日にはG20が開催されているインドネシア・バリ島において、バイデン大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談が開催され(2022年11月15日記事参照)、ナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問以降に停止していた気候変動対策の両国協議を再開することで合意したとされている(「ワシントン・ポスト」紙電子版11月14日)。ロシアのウクライナ侵攻などによる世界的なエネルギー価格高騰の影響で、動きが消極的になっていた最近の気候変動対策だが、開催中のCOP27を契機に、今後はどのような方向性が打ち出されるか、米中両国の動向を含め注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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