米11月の雇用者数26万1,000人増、失業率は3.7%に上昇、時給の伸び加速

(米国)

ニューヨーク発

2022年11月07日

米国労働省が11月4日に発表した10月の非農業部門雇用者数は前月より26万1,000人増PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と、市場予想の20万5,000人増を上回った。就業者数は前月より32万8,000人減少し、失業者数は前月から30万6,000人増加した。失業率は前月の3.5%から3.7%(市場予想は3.5%)に上昇した(添付資料図参照)。

失業者のうち、一時解雇の失業者は前月(75万8,000人)より8万9,000人増の84万7,000人、恒常的失業者は前月(118万1,000人)より6万人増の124万1,000人だった。

労働参加率(注)は、生産年齢人口が前月より17万9,000人増加し、労働力人口が前月より2万2,000人減少した結果、前月から0.1ポイント低下の62.2%だった。

平均時給は32.58ドル(前月:32.46ドル)で、前月比0.4%増(前月:0.3%増)、前年同月比4.7%増(前月:5.0%増)となり、前月比では前月より上昇した一方、前年同月比では低下した(添付資料表1参照)。

非農業部門における10月の雇用者数の前月差26万1,000人増の内訳をみると、民間部門は23万3,000人増で、うち財部門が3万3,000人増加し、主な業種として製造業は3万2,000人増、建設業は1,000人増だった。サービス部門は20万人増で、教育・医療サービス業7万9,000人増、対事業所サービス3万9,000人増、娯楽接客業3万5,000人増と小幅ながらも主要業種で引き続きプラスとなった一方で、年末商戦を控える小売業は7,000人、運輸倉庫業は8,000人の若干の増加にとどまった。また、政府部門は2万8,000人の増加だった(添付資料表2参照)。

10月の人種別失業率は、白人3.2%(前月:3.1%)、アジア系2.9%(2.5%)、ヒスパニック・ラテン系4.2%(3.8%)、黒人5.9%(5.8%)と全てで悪化した。

ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は「成長率鈍化にもかかわらず、労働市場は引き続き極めてタイト」で高インフレ圧力は続いているとの認識を示しているが(2022年11月4日記事参照)、引き続き堅調な雇用者増や高い時給の伸びを示した今回の雇用統計はそれを裏付ける結果となった。一方、足元ではインターネット販売大手のアマゾンが今後数カ月間、新規採用を凍結すると発表するなど、ハイテク企業や金融機関で景気悪化や業績悪化を踏まえた雇用縮小の動きが見られる。収まらないインフレ圧力にパウエル議長は「最終的な金利水準が(従来の)予想よりも高くなる」ことを示唆しており、2022年の年末商戦の小売売上高は前年同期比6~8%増と前年の13.5%増から大幅な鈍化が見込まれているなど(2022年11月4日記事参照)、金融引き締めの影響は実体経済にも表れることが予想されている。長期化が見込まれる金融引き締めと、その米国経済への影響に注目が集まる。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(宮野慶太)

(米国)

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