第2回ヒートポンプサミット開催、導入加速に向け論点整理
(ドイツ)
ミュンヘン発
2022年11月30日
ドイツのロベルト・ハーベック連邦経済・気候保護相とクララ・ガイビッツ住宅・都市開発・建設相は11月16日、第2回ヒートポンプサミットをオンラインで開催した。ヒートポンプ関連企業・手工業者、住宅関係、労働組合、研究機関など幅広い関係分野から約50人が出席した。「2024年以降、毎年50万台のヒートポンプ導入」の目標に向けて、2022年6月に開催した第1回ヒートポンプサミット(2022年8月15日付地域・分析レポート参照)以降の進捗や課題の優先順位、必要な措置などを確認・検討した。
議論の結果、(1)欧州とドイツでのヒートポンプ生産能力の拡大が必要で、そのためには、圧縮機(コンプレッサー)、半導体、制御機器など部品の確保が必要、(2)ヒートポンプを設置する職人・専門家が不足しており、職業訓練者を含め、職業の魅力を高めることが重要、(3)ヒートポンプの導入は現在、新築かつ戸建てが中心だが、今後は既存建物や共同住宅への導入も必要との点で一致し、論点を整理した。それぞれの点について、2023年1月末までに方策やロードマップの具体化を進めていく〔詳細は第2回ヒートポンプサミットで合意した要点ペーパー(ドイツ語のみ)で確認できる〕。
供給面の課題解決がカギ
ドイツ暖房産業組合(BDH)によると、2021年にドイツで導入されたヒートポンプは前年比28.3%増の15万4,000台。2015年(5万7,000台)の2.7倍となっており、毎年順調に増加している。ただし、2021年に新規導入された暖房機器全体(92万9,000台)に占めるヒートポンプのシェアは16.6%で、ガス暖房機が全体の70.3%を占めている。ドイツエネルギー機構(dena)によると、2021年は、新築に設置される暖房機の約半分がヒートポンプだったのに対し、既存建物に新規設置される暖房機は93%がガスまたは石油によるものだった。
denaが2022年6月末から7月初頭にかけて、エネルギーコンサルタントなどを対象に行ったアンケート(回答数487)では、9割近くが施主からヒートポンプについて問い合わせを受けるとした。一方で、設置完了まで1年を見込む必要があるとの回答が45%に上った。denaは、今後のさらなる市場拡大には需要面ではなく供給面がカギとなるとした。第2回ヒートポンプサミットでの論点も、供給面の改善が主となっている。
ドイツは2045年の気候中立達成を決めており、製造業や建築など各分野での温室効果ガス削減が必須となる(2021年7月6日記事参照)。2022年3月には連立政権内で「可能な限り、2024年以降は新規に設置する暖房機の65%以上を、再生可能エネルギーを使用するものにする」ことが決まっており、関係省庁間で必要な法改正の議論が進行中だ。8月にはオラフ・ショルツ首相がヒートポンプで国内大手のフィースマン本社を視察するなど政治面の動きもあり、欧州でのヒートポンプ市場のさらなる拡大が期待される。
(高塚一)
(ドイツ)
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