購買力基準に基づく家庭用電気料金、ルーマニアがEU最大に

(ルーマニア)

ブカレスト発

2022年11月10日

EU統計局(ユーロスタット)の10月の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年上半期のルーマニアの家庭用電力価格(税込)は1キロワット時(kWh)0.2362ユーロで、加盟27カ国中で10番目に高かった。一方、購買力基準「purchasing power standard:PPS〕(注1)に基づく電気料金では、ルーマニアが最も高い44.6を記録、チェコが38.9で続いた。業務用電力では、自国通貨建ての2022年上半期料金の前年同期比上昇率は、ギリシャの2.6倍が最も高く、これにルーマニア2.4倍、デンマーク2倍が続いた。

欧州投資銀行(EIB)が8月にEU加盟国、英国、米国、中国の計30カ国の15歳以上を対象に実施、2万8,000人以上から回答を得た「2022~2023年度EIB気候調査(2022-2023 EIB Climate Survey)」によると、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますロシアのウクライナ侵攻をきっかけにグリーン化への移行が加速すると回答した割合は、ルーマニアでは73%で、EU加盟国中で6番目に高かった。また、同国では79%が今後数年以内にエネルギー消費量を大幅に削減しなければ世界的な大惨事を経験することになると回答した。さらに、64%がエネルギー価格に累進制を導入すべきだとした。

ルーマニア政府は9月1日に電気・ガス料金に上限価格を設定し(2022年9月22日記事参照)、国民のエネルギー料金負担軽減に努めている。長期的には「国家エネルギー・気候統合計画(PNIESC)」で、2030年までに最終消費エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を30.7%にまで高めるとしている(2022年9月7日記事参照)。

ブカレスト市役所は10月、EU基金を財源に約1,932万レイ(約5億7,960万円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約30円)を投じ、3プロジェクトで合計2,454キロワット・ピーク(kWp)の太陽光発電設備を導入、施工業者との契約締結後1年以内に稼働させ、4年で投資回収する計画だ。

民間設備投資では9月23日、リトアニアのリニューアブル・エナジー・ファンド・I(注2)が容量計102.7メガワット(MW)に上る太陽光発電プロジェクト6件の契約に署名したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。これにより、同ファンドがルーマニアで開発中のプロジェクトのポートフォリオは268.7MWに達し、ルーマニアでの同ファンドによる投資総額は2億ユーロを超えると見込まれている。

(注1)EU統計局の専門用語で、各国通貨での国の経済総計を当該国の購買力平価(PPP)で除した値。ユーロに対する購買力基準(PPS)の為替レートとして解釈できる。

(注2)リトアニアのINVLアセットマネジメントが2021年に設立した。

(西澤成世)

(ルーマニア)

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