電気ガス料金の補助期間を延長、高すぎる利益には罰金も

(ルーマニア)

ブカレスト発

2022年09月22日

ルーマニア政府は9月1日付緊急指令119号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、エネルギー価格高騰から国民生活や経済活動を守るため、2023年3月末までとしていた電気・ガス料金の上限価格設定と補填(ほてん)を、2023年8月末まで延長するとした。延長後の措置は2022年9月1日から適用されており、主な内容は以下のとおり。

1.電気料金の上限料金

(1)一般家庭

  • 2021年における1カ月平均消費量が100キロワット時(kWh)以下だった場合、1kWh当たり0.68レイ(付加価値税を含む、以下同じ)(約20円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約29円)となる。
  • 同上の条件で100kWh超255kWh(以前は300 kWh)以下だった場合、0.80レイ。

(2)中小企業は1kWh当たり1レイ。ただし、2021年の1カ月平均消費量の85%までが、この上限価格適用範囲となる。

2.天然ガスの上限料金:前回の支援措置から変更ない。すなわち以下のとおり。

(1)一般家庭向けは1kWh当たり0.31レイ

(2)企業向けは2021年の総消費量が5万メガワット時(MWh)以下だった場合、1kWh当たり0.37レイ

加えて今回の緊急指令では、9月1日以降、電力・ガス関連事業者に罰則を設けた。発電事業者の場合、1MWh当たりの販売価格が450レイを上回った場合、超過分がエネルギー規制局(ANRE)の決定によって連帯貢献金(contribuției de solidaritate)として徴収され、エネルギー移行基金(Fondul de Tranziţie Energetică)に蓄えられる。また、電気・ガスの卸小売り、アグリゲーター(注)など事業者が、販売によって得た利益が2%超の場合、超過分が同基金に徴収される。さらに、これら事業者が価格を故意につり上げることを目的として、大量かつ継続的な取引を行ったことが明白とANREが判断した場合、当該業者は売上高の5%が罰金として科される。

ビルジル・ダニエル・ポペスク・エネルギー相は9月2日、同氏のフェイスブックで、この緊急指令はEU理事会(閣僚理事会)の方針にのっとったもので、同9日にブリュッセルで開催される同理事会のエネルギー担当相臨時会合(2022年9月12日記事参照)で発表する、と述べていた。

ジェトロのヒアリングによると、大企業として登記されている一部の日系製造業は、この1年間で電気代が3.5倍に値上がりし経営を圧迫している、などと困惑している。今回の緊急指令のうち、電気・ガス料金の上限価格の設定は一般家庭や中小企業に限られているため、大企業には裨益(ひえき)しないが、電力事業者の利益を制限する部分について製造業の経費抑制効果が期待される。

(注)電気の需給バランスを調整する中間事業者。

(西澤成世)

(ルーマニア)

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