カナダ連邦政府職員のリモート対応継続がビジネスに支障、32団体が改善要求

(カナダ)

米州課

2022年11月08日

カナダ商工会議所とオタワ商工会議所を含む32のビジネス団体の代表は10月31日、多くがリモートでの対応を続けている連邦政府の職員らを「なるべく早く」出勤体制に戻すよう求める書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを、カナダ連邦政府のモナ・フォーティエ行財政管理調整委員会委員長宛てに提出した。

書簡は、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化の様相を呈するにつれて、ビジネス界が通常の経済活動を求め、企業は職場復帰計画を実行しているが、他方で、政府関係組織の一部では、それに見合った対応が著しく遅れていると指摘。公共サービスが不十分であるがゆえに、カナダ国民や企業にたびたび不利益が生じていることから、職員を出社させていない全ての政府組織、特に連邦政府が先陣を切って可能な限り迅速に復帰させるよう要請している。特に、リモートによる対応では、直接対面で提供される質の高い政府サービスの代替にはならないとして、職員の出社復帰体制に向けたリーダーシップを連邦政府に求めるとしている。連邦政府の職員が特に集中しているオタワ・ガティノー首都圏(注)がカナダの政府機関所在地域の中で、最も出社率が低いというデータが出ているという。

書簡には、カナダ商工会議所のほか、地方の商工会議所、カナダ・ビジネス航空連盟、カナダ・フロンティア免税店連盟、カナダ独立事業連盟、カナダ港湾当局連盟、カナダ製造・輸出業者連盟、カナダ小売評議会、カナダ・ビジネス評議会、カナダ自動車ディーラー連盟など32組織の代表が名を連ねている。

これまで、連邦政府の勤務体制に関しては、財務省が2022年5月に在宅とリモートのハイブリッド体制に関するガイドラインを発表し、実際の運用は個々の部門に委ねてきた。しかし、一部の公共サービス組合からは、政府の計画は混乱を招き、個々の部門が相互の調整をあまり行わずに対応を進めているとの批判も出ていた(CTVニュース11月1日)。

オタワのダウンタウンエリアには、新型コロナウイルス感染症流行前は、毎日数万人の連邦政府職員が通勤していたが、流行前の状態に戻りつつある状態にはないことを示す兆候が多く見られている。例えば、2021年春にフォーティエ委員長が「ハイブリッドワークは今後も定着する」と述べ、ダウンタウンのオフィスビルを手頃な価格の住宅に転換する構想について言及している(CTVニュース4月11日)。また、2022年10 月中旬には、カナダの公共サービスおよび調達担当副大臣補佐官が、政府がダウンタウンに保有している広大な延べ面積の政府所有オフィススペースを売却する計画を加速させていると、オタワ不動産フォーラムで発言している(「リアル・エステート・ニュース・エクスチェンジ」10月18日)。財務省は公共サービスの戦略的政策見直しを開始し、5 年間で 60 億ドルの削減を目標にしている、と報道されている。また、オタワ市の当局幹部は、連邦政府人員が対面で首尾一貫した対応を行うことがないままでは、ダウンタウンの将来が危ぶまれるとして、特に、市の次世代型路面電車(LRT:Light Rail Transit)システムが、新型コロナウイルス感染症流行前の基準での乗客数予測に基づいて構築されている点を挙げた。

ビジネス界からは対面での対応希望がだされているところ、多くの連邦政府職員は、ハイブリッドな勤務形態の柔軟性を好んでおり、オタワのダウンタウンのビジネスを維持することは自分らの責任ではないと主張しているという(CTVニュース2022年11月1日)。

(注)オンタリオ州オタワ市とオタワ川を挟んで対岸のケベック州ガティノーのエリアは首都機能を有し、カナダ連邦の首都圏の主要部分を形成している。

(高山さわ)

(カナダ)

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