脱炭素化への取り組み推進方針も、エネルギー転換は難航

(ベトナム)

ハノイ発

2022年11月17日

エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)関係会合に、ベトナムからはチャン・ホン・ハー天然資源環境相が政府代表として出席し、気候変動対策へのコミットメントをあらためて示した。ベトナムは、2021年のCOP262050年までの温室効果ガスの排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)への取り組みを表明して以降、2030年以降の石炭火力発電所の新設停止、2040年以降の石炭火力発電の段階的廃止などの方針を発表している。脱炭素の検討が進む一方、増加する電力需要への対応も迫られており、ハー同相は各国・機関とのエネルギー転換の協力に向けた対話も積極的に進めた。

2022117日に、ハー同相はシンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)のラビ・メノン長官と会談。202110月にベトナム天然資源環境省とシンガポール貿易産業省が締結した、エネルギーとカーボンクレジット協力に関する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく協力内容について議論が交わされた。ハー大臣はメノン長官に対し、ベトナムで需要増加が予測されるカーボンクレジットの市場形成に当たっての法的枠組み、ガバナンス制度の早期構築に向けた支援を要請した。

同日、ハー同相は米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使とも会談。ベトナムの取り組みを紹介しつつ、エネルギー安全保障の確保と温室効果ガス排出量の削減の両立は困難とし、資源と技術の両面で国際社会の支援を求めた。

またハー同相は、118日には「人と地球のためのグローバル・エネルギー同盟(GEAPP)」(注1)のサイモン・ハーフォード最高経営責任者(CEO)およびベゾス・アースファンド(注2)のアンドリュー・スティアCEOとも会談。GEAPPとベゾス・アースファンドは、ベトナムのエネルギー転換への支援を表明する一方、協力内容の具体化に当たり、ベトナムに対して、資源の割り当て、再生可能エネルギーやグリーン水素燃料などの開発技術の使用方針を明確化するよう求めた。

具体的な電源開発計画の公布に大幅な遅れ

COP27を通じて、ベトナムは脱炭素に向けた積極的な外交を展開した。一方、国内における安定した電力供給との両立が課題だ。先述のとおり、主力の石炭火力からのエネルギー転換が求められる一方、電力需給が逼迫するリスクがある。そのため、2021年から2030年までの電源開発計画をまとめた第8次国家電力マスタープラン(PDP8)の策定が大幅に遅れている。その結果、大規模電源計画および送電網の開発案件の進捗が停滞しており、中長期的な経済面への影響が懸念されている。

(注1)途上国における再生可能エネルギー転換などの支援を目的とした、財団や国際機関などによる同盟。

(注2)米国アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げた基金。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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