政府が脱炭素社会実現に向けAI活用を促進

(英国)

ロンドン発

2022年11月29日

英国政府は11月22日、脱炭素化に人工知能(AI)活用を支援する「脱炭素化に向けたAIプログラム(AI for Decarbonisation Programme)」の募集を開始外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同プログラムを通じて150万ポンド(約2億5,050万円、1ポンド=約167円)の資金を提供する。

このプログラムは、テクノロジーやエネルギー、産業の各分野の連携強化により、成長を促進して野心的なネットゼロ目標を達成するために、AI分野のさらなるイノベーション促すことを目指す。政府が2021年7月に発表した「英国イノベーション戦略」(2021年7月30日記事参照)では、脱炭素化目標の達成をAIにより支援する方法を定めている。特に、再生可能エネルギーへの迅速な移行や、エネルギー生産性の向上と燃料転換による産業の脱炭素化、農業分野での排出量削減を可能にするAIの活用を支援対象として推奨している。

助成金は2つのストリームで構成される外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。ストリーム1はAIと脱炭素化に関するバーチャルの中核的な拠点(Centre of Excellence、注)設立に最大50万ポンドを拠出する。ストリーム2は100万ポンド規模で、脱炭素化に資するAI技術の開発を促進するプロジェクトに拠出する。政府は2023年後半にも優先分野の支援に向け追加資金を提供する予定としている。

政府は2021年9月、英国がAI分野で主導的な役割を果たすため、10年間の計画「国家AI戦略」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2022年7月には「AI行動計画」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、主に以下の3つの柱を掲げた。

  • 国内で開発するAIの種類、頻度、規模を大幅に増やすための長期的なニーズに対応した投資
  • 国内での次世代AIシステムの設計・開発を支援し、英国企業によるAI活用、生産性向上に向けたサポート
  • AIを開発、利用する際のガバナンスの枠組み策定や実務的なツール・基準の開発

英国は行動計画に併せて、AI規制に関し、イノベーションを促進するようなアプローチを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。規制の枠組みの基礎となる原則を打ち出している。具体的には、AIの使用用途や影響に応じた規制や、リスクや機会損失の明確な証拠がある問題に焦点を当てるほか、AIの特性に合わせた分野横断的な原則を確立し、運用の一貫性とイノベーションの支援に向けた可能な限り容易なフレームワークの構築に向けて、規制当局と連携していく。また、状況に応じた調整を行えるよう、ガイダンスなど法的拘束力のないものとするよう、規制当局に要請するとしている。

(注)部署の異なる人材やノウハウを横断的に組織化し、活用すること

(島村英莉)

(英国)

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