2021年のカナダ経済は大幅回復、2022年も堅調、ジェトロの世界貿易投資動向シリーズ2022年版カナダ編

(カナダ)

米州課

2022年11月30日

ジェトロは11月下旬、世界貿易投資動向シリーズの2022年版のカナダ編を公開した。

2021年のカナダの実質GDP成長率は4.5%と、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)対策による経済活動制限の解除を受け、2020年のマイナス5.2%から大幅に回復した。飲食業などの営業再開もサービス消費を促し、GDP6割近くを占める家計最終消費が前年比5.2%増となった。2022年も堅調に推移しており、第1四半期(13月)は前期比年率2.5%、第2四半期(46月)は同6.9%と、4四半期連続で拡大した。

2021年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比21.6%増の5,820億カナダ・ドル(約599,460億円、Cドル、1Cドル=約103円)、輸入は13.0%増の6,137Cドルだった。輸出入ともに2桁台の伸びを示し、新型コロナ感染拡大前の2019年の水準(輸出5,441Cドル、輸入6,020Cドル)を上回った。貿易収支は317Cドルの赤字となったが、赤字額は前年から327Cドル縮小した。輸出を品目別にみると、構成比最大の鉱物性生産品が57.1%増と大幅に増加した。輸入は、航空機および関連部品(88類)と繊維および関連製品(5063類)で減少したが、他の主要品目は全て増加した。

2021年の対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー。対外も同様)も、2020年の落ち込みから回復し、前年比2.4倍の755Cドルだった。M&Aが前年比4.5倍の161Cドルに拡大したことが寄与した。2021年以降に実施または発表された対内直接投資の大型案件には、Eコマース拡大に伴う物流拠点の拡大を目的とした、米ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラストによるカナダのWPT インダストリアル・リールエステート・インベストメント・トラストの買収がある(202110月完了)。

対外直接投資は前年比97.4%増の1,232Cドルだった。M&Aが前年の4.5倍に拡大し、再投資収益も86.2%増加した。大型の対外投資案件には、鉄道大手カナディアン・パシフィック・レールウエーによる、同業の米カンザスシティ・サザン(KCS)の買収がある(202112月完了)。この合併で、カナダ~米国中西部~メキシコ間で急を要する高付加価値部品や腐食性食物などのインターモーダルや、3カ国間の自動車関連の製造・物流拠点をつなぐことが可能になる。

通商面では、カナダの乳製品の関税割当制度に対して、米国やニュージーランドとの間で紛争解決手続きが行われているほか、カナダ政府は、米国がカナダ産の針葉樹林に賦課しているアンチダンピング関税と相殺関税を引き続き問題視している。対中関係については、カナダ政府は20225月、米国や英国と足並みをそろえ、中国の通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)を国内の第5世代移動通信システム(5G)から排除することを発表している。

世界貿易投資動向シリーズの2022年版のカナダ編は、ジェトロのウェブサイトPDFファイル(1.2MB)から全文を確認できる。

(赤平大寿)

(カナダ)

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