欧州委、プラットフォーム事業者の民泊仲介サービスの透明性確保へ規則案発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年11月09日

欧州委員会は11月7日、持続可能な観光に向けた政策立案に役立てるために、民泊など宿泊用短期賃貸サービスのデータ収集に関する規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。宿泊用短期賃貸(Short-term accommodation rentals)は、EU域内の旅行者用宿泊施設の全供給量の約4分の1を占めるなど、観光業でその重要性は高まっている。一方で、米国の民泊大手エアビーアンドビーに代表されるオンラインプラットフォーム事業者が提供する民泊仲介サービスにより、民泊などの一般の住居を利用した旅行者向けの短期賃貸は拡大を続けており、住民向けの安価な住宅不足や観光客の過度の増加などの社会問題につながっているとの指摘も出ている。加盟国や地方自治体レベルで規制が進められているが、宿泊施設の登録制度の不備やオンラインプラットフォーム事業者に対する不十分な規制により、宿泊施設やその利用状況に関して収集されるデータにばらつきがあり、管轄当局の政策立案に十分に生かされていない。

そこで、今回の規則案は、宿泊用短期賃貸サービスに関するデータ収集についてEUレベルの共通枠組みを設定することで、データ収集の強化とともに、民泊の透明性の確保を目的としている。今回の規制案は、加盟国あるいは地方自治体による宿泊施設に対する直接的な規制を置き換えるものでない。ただし、加盟国あるいは地方自治体が宿泊施設の登録制度など民泊に関して規制する場合は、今回の規則案に合致した制度を構築することが求められる。また、EUでは、デジタルサービス法(2022年10月6日記事参照)のように、米国IT大手を念頭にオンラインプラットフォーム規制を強化しており、欧州委によると、今回の規則案もデジタルサービス法を補完する規制と位置づけている。

今回の規則案によると、加盟国が登録制度を設置する場合、オンライン上で平易に登録が完了する制度を設置することが求められる。提供主(ホスト)は、宿泊施設の提供を本職としているか否かにかかわらず、オンラインプラットフォームを通じて宿泊施設を有償で提供する場合、提供主や宿泊施設に関する情報、宿泊施設が提供主の主たる住居であるかなどの情報について、加盟国が設置する制度に登録することが義務付けられる。加盟国は、登録完了後に提供主に対して宿泊施設ごとに固有の登録番号を発行する。

民泊仲介サービスを提供するオンラインプラットフォーム事業者は、宿泊施設をオンラインプラットフォームに掲載する場合、登録制度によって発行された固有の登録番号を表示することが求められる。また、オンラインプラットフォーム事業者は、宿泊施設ごとに登録番号、宿泊日数、宿泊者数などの情報を管轄当局に対して毎月報告することが義務付けられる。さらに、オンラインプラットフォーム事業者は、掲載された宿泊施設とその登録番号が一致しているかなど、提供主の登録義務の履行状況を無作為に検査する必要がある。管轄当局は、提供主による登録情報に違反が見つかった場合、登録番号の停止やオンラインプラットフォームからの削除を要請することができる。

同規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 176171585a466a62