2021年の米国経済は急回復、対中強硬姿勢は継続、ジェトロの世界貿易投資動向シリーズ2022年版米国編

(米国)

米州課

2022年11月30日

ジェトロは11月下旬、世界貿易投資動向シリーズの2022年版の米国編を公開した。

2021年の米国の実質GDP成長率は5.9%となり、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響を受けてマイナス2.8%だった2020年から急回復し、1984年以来37年ぶりの高い成長率を記録した。経済回復を牽引したのは、GDP総額の7割を占める個人消費だ。2021年の個人消費は前年比8.3%増、成長率への寄与度は5.5ポイントで、全体を大きく押し上げた。他方、2022年は堅調だった2021年から反転し、第1四半期(13月)は前期比年率マイナス1.6%、第2四半期(46月)はマイナス0.6%と、2期連続のマイナス成長となった。サプライチェーンの混乱を背景に、在庫積み増しを調整する企業の増加などが影響したとみられる。

2021年の米国の財貿易(国際収支ベース)は、新型コロナ感染拡大に伴って輸出入ともに大幅に減少した前年から回復し、輸出は前年比23.0%増の17,614億ドルだった。輸入は21.5%増の28,517億ドルで、輸出入ともに過去最高額を記録した。輸入品需要の拡大やエネルギー価格の高騰により、輸入額の増加(5,056億ドル)が輸出額の増加(3,291億ドル)を上回り、貿易赤字は19.3%増の 1903億ドルと、初めて1兆ドルを超えた。

2021年の米国の対内・対外直接投資も、ともに前年から大きく拡大した。対内直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー。対外投資も同様)は前年比4.1倍の3,892億ドルとなった。バイデン政権が経済安全保障などの理由から重要視している半導体や電気自動車用バッテリーといった産業で大規模な投資がみられた。地域別にみると、欧州が前年比6.9倍の2,678億ドルと大幅に拡大した。対外直接投資は前年比71.2%増の3,500億ドルだった。欧州向けが前年の2.1倍の2,443億ドルと増加し、中でもアイルランドが3.9倍の773億ドル、英国が2.2倍の651億ドルと拡大した。欧州以外では、カナダが3.6倍の320億ドルと増加したほか、日本が14億ドルの引き揚げ超過から83億ドルに転じた。

通商面では、バイデン政権が20211月の発足以降、労働者中心の通商政策とともに、人権に基づく経済安全保障を強化し、厳しい対中政策を継続している。輸出管理の分野では、商務省産業安全保障局(BIS)が人権侵害に関与した疑いで中国籍の事業体などを輸出管理規制(EAR)のエンティティー・リスト(EL)に追加している。輸入規制では、202112月に、新疆ウイグル自治区が関与する物品の輸入を原則禁止とするウイグル強制労働防止(UFLPA)が成立した。20226月から施行され、8月時点で既に太陽光発電製品の輸入差し止めが確認されており、今後もその運用実態に関心が集まっている。

世界貿易投資動向シリーズの2022年版の米国編は、ジェトロのウェブサイトPDFファイル(1.8MB)から全文を確認できる。

(赤平大寿)

(米国)

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