大阪発、メドテック支援プログラム「Origin Japan」初開催

(オーストラリア、日本)

シドニー発

2022年11月04日

ジェトロは、オーストラリアの医療系アクセラレーターであるメドテックアクチュエーター(MedTech Actuator外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と共に、医療・ヘルスケア分野における日本のスタートアップ(SU)のアジア太平洋地域でのビジネス展開を支援するプログラム、「オリジン・ジャパン(ORIGIN JAPAN)」をメルボルンで初開催した(期間:102428日)。

本プログラムは、プレシードからシリーズAといった初期段階のSUおよび起業家が対象。参加者は、アイデアの商業化や、アジア太平洋地域でのグローバルな事業展開を見据えたメンタリングや集中講義を受け、最後には現地SUも含めたピッチコンペティションに挑んだ。

写真 メドテックアクチュエーターの代表2人からSUエコシステムについての講義を受ける参加者達(ジェトロ撮影)

メドテックアクチュエーターの代表2人からSUエコシステムについての講義を受ける参加者達(ジェトロ撮影)

日本からは計16グループの申し込みがあり、大阪でのピッチコンペティション国内予選で選抜された以下3グループがメルボルンでのプログラムに参加した。

〇アイデバイス(iDevice外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):密閉性を確保しながら皮膚疾患を予防できる蛇腹構造の人工呼吸器用マスクを開発した。既存のマスクでは、空気の漏れを防ぐためにマスクを顔に強く押しつけることで、褥瘡(じょくそう、注)という皮膚疾患が起こりやすかった。

大阪ヒートクール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:錯覚を利用し、皮膚を傷つけることなくひっかいた感触を感じさせるためのデバイスを作成する、大阪大学発のSU。身体の強いかゆみに対する新しい解決方法を開発。

〇リ・リヴ(Re:live外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):がん患者などの闘病サポートを行うためのアプリを開発中。同じ疾患を持つ闘病者同士がつながることのできるSNS機能や、闘病中・後を見据えたキャリアサポート機能などを備えたアプリを提供予定。

参加者はメルボルンで、現地SUや起業家と一緒に、講義やグループディスカッションなどに参加し、国際的な知見と交流を深めた。講義では、治験を行うための費用が安価で、許認可に必要な準備期間が短いといったオーストラリアのメリットや、現地政府機関の医療・ヘルスケア業界への支援の枠組みなども紹介された(2020年6月18日付地域・分析レポート参照)。

1027日には現地SUや起業家も含めたピッチコンペティション国際予選が行われ、大阪ヒートクールが121日にメルボルンで行われるピッチコンペティションファイナルの日本代表として選ばれた。大阪ヒートクール代表の伊庭野健造氏は「大変光栄で事業の励みになる。決勝でよりアピールするとともに海外展開の礎にしたい。地元の起業家にもこの経験をフィードバックし、(大阪の)国際化に貢献できればと思っている」と述べた。

写真 現地の医療系SUの研究所を見学する日本の参加者達(ジェトロ撮影)

現地の医療系SUの研究所を見学する日本の参加者達(ジェトロ撮影)

なお、本プログラムは、大阪府などが2020年に内閣府の「世界に伍(ご)するスタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に選定されたことにより実施されたもの。政府、政府関係機関、民間サポーターによるスタートアップへの集中支援を実施することで、グローバル拠点都市の形成を目指すとしている。

(注)長期に圧迫されている皮膚の血流が滞り、周辺組織が壊死(えし)してできる傷やただれ。一般的には「床ずれ」などでよく知られている。

(児島亨)

(オーストラリア、日本)

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